宇宙スタートアップのアストロスケール、6月にも新規上場=関係者

Miho Uranaka Sam Nussey

[東京 5日 ロイター] - スペースデブリ(宇宙ごみ)除去の商用化を進めるアストロスケールホールディングス(東京・墨田)が、早ければ6月の新規上場を目指していることが分かった。複数の関係者が明らかにした。

宇宙事業を手掛けるスタートアップ企業の上場はispace(アイスペース)とQPS研究所に続き、日本でも増えつつある。成長産業として期待が高まる一方、事業化までに開発費がかさみ、一部の投資家だけではリスクを取り切れないことが背景にある。

関係者2人によると、アストロスケールは3月に海外の機関投資家と面談し、上場のタイミングを判断するため反応を探った。関係者3人によると、主幹事証券は三菱UFJモルガンスタンレー証券とみずほ証券。時価総額はアイスペースも意識されていると、関係者の1人は話す。アイスペースの株価は振れ幅が大きく、昨年4月の52週高値から約7割下げている。

アストロスケールは昨年も上場を目指していたが、企業価値の評価や資金繰りの状況などから時期を後ろ倒しにしてきた経緯がある。投資家の反応次第では、今回も延期になる可能性がある。

2013年に設立されたアストロスケールは英国、米国、フランス、イスラエルに子会社を持ち、従業員は500人超。打ち上げたロケットの残骸や機能停止した衛星が地球の軌道上に増える中、こうした「宇宙ごみ」を除去する衛星を開発して事業化することを目指している。

22年には英政府と、26年までに衛星2機を除去する契約を結んだ。今年2月には宇宙航空研究開発機構(JAXA)のプロジェクトの一環として、高速で移動するデブリに接近して調査する実証衛星を打ち上げた。

ロイターは電話と電子メールでアストロスケールにコメントを求めたが、現時点で返答を得られていない。三菱UFJモルガン・スタンレー証券、みずほ証券はコメントを控えた。

<増える宇宙スタートアップ、投資家の反応に濃淡>

主要国が宇宙開発に力を入れる中、日本政府は23年6月に策定した宇宙基本計画で、関連機器やサービスの市場規模を20年の4兆円から30年代早期に倍増させる目標を掲げた。これまで宇宙産業は大手のエンジニアリング企業や電機メーカーが中心だったが、最近は大学発など約100社のスタートアップが存在する。

月面へ積み荷を輸送するサービスの事業化を目指すアイスペースは23年4月に、超小型の観測衛星の開発を手掛けるQPS研究所は同年12月に東証グロース市場に上場した。

DZHフィナンシャルリサーチの田中一実アナリストは、「宇宙スタートアップはブームで、個人投資家の間で人気化しやすい」と話す。一方で、QPSのように業績見通しが比較的試算しやすい企業もあれば、見通しづらい企業もあると指摘する。

日経平均が史上最高値を更新するなど市場環境は好調だが、機関投資家は宇宙スタートアップの先行きを楽観視していない。

アイスペースは昨年の上場直後に民間企業として初の月面着陸に挑んだが失敗。今年3月に実施した公募増資は、最終的に株数を半分に減らした。調達金額は約84億円で、26年に計画する米航空宇宙局(NASA)の積み荷を運ぶ事業に充てる。

アイスペースの株価は増資の決議以降、これまでに約3割下落し、募集価格の871円を割り込んで取引されている。海外の機関投資家の1人は、「事業が成功するかどうかわからない中では長期で株を保有できない」とし、すでに売却したという。

アイスペースはロイターの問い合わせに文書でコメントし、「日本および世界中の個人投資家、機関投資家がアイスペースに寄せる信頼を非常に誇りに思う」と回答。事業計画と見通しは強固で、掲げた目標は達成可能とした。

3月には宇宙スタートアップのスペースワン(東京・港)が開発した小型ロケット「カイロス」の初号機がおよそ5秒間上昇した後に爆発。昨年3月にはJAXAと三菱重工業が共同開発したH3ロケット初号機も打ち上げに失敗しており、宇宙ビジネスのリスクの高さが改めて浮き彫りになった。

ベンチャーキャピタル(VC)のジャフコ グループで、アストロスケールや小型衛星開発のSynspective(シンスペクティブ、東京・江東)などの宇宙ベンチャーに投資してきた長岡達弥氏は、「技術実証できていない会社はリスクが高い。そのリスクを誰が請け負うか。今までは未上場の場合はVCが担ってきたが、資金調達の規模に限界があるため、さらなる調達を求め、上場する会社も出てきている」との見方を示す。

未上場の世界では大きな額の資金調達は少なくとも半年は必要で、難易度も高い。

宇宙スタートアップによる株式市場からの資金調達は「未上場時代にある程度資金を集めて上場を実現できれば、継続企業としてやっていけるという指針になった」と説明する。

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(浦中美穂、Sam Nussey、取材協力:小宮貫太郎 編集:久保信博)

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