県、マニュアル順守要請 「ニジサクラ」不適切放流問題

山形県庁(資料写真)

 公益財団法人「県水産振興協会」(鶴岡市)が生産する県のご当地サーモン「ニジサクラ」の幼魚を処分のため不適切に放流した問題で、県は4日までに、同協会や県内の養殖業者に対し、自然界に流出させないよう求めた県の生産・出荷マニュアルの順守を改めて求めた。釣り人には、ニジサクラと疑われる魚を捕獲した場合は再放流したり、別の川に移したりしないように呼びかけている。

 同協会は遊佐町の内水面水産センターで幼魚を育てている。県や協会によると、複数の養殖業者から取引のキャンセルがあり、水槽許容量が上限に達する恐れがあったため、昨年12月中旬に鶴岡市の赤川水系に約千匹を放ったという。

 県水産振興課によると、県内4地域の9業者が幼魚を引き取り養殖。問題を受けて県は3日付で、協会と業者にマニュアルの徹底を文書で通知した。またホームページで釣り人に疑われる魚を捕まえた場合は再放流せず、同課に連絡するよう求めている。協会も漁協や釣具店にチラシを配布し、協力を要請する。

 吉村美栄子知事は4日の定例記者会見で、ブランド化を進める中で起きた問題に「大変残念だ。不適切な対応だった。もっと早く県に相談してほしかった」と語った。

 ニジサクラは県内水面水産試験場(米沢市)で2013年度に開発を始め、養殖向きのドナルドソン系ニジマスとサクラマスを掛け合わせて誕生、23年度に本格デビューした。染色体を3組持つ「3倍体」で生殖能力はない。県は交雑などによる生態系への影響はないとしているが、完全養殖で自然界に生息していないことから、生産・出荷マニュアルで、放流しないよう定めている。

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