一番列車運転士、42歳新人が大役 のと鉄道、6日全線再開

全線で運行が再開する6日に運転士デビューする山本さん=のと鉄道穴水駅

  ●「乗客に安心感を」

 地震で甚大な被害を受けたのと鉄道(穴水町)が6日、全線で運行を再開する。穴水駅発の一番列車のレバーを握るのは新人運転士の山本兼司さん(42)=能登町鮭尾=だ。運転士デビューを控えた5日、山本さんは「乗客に安心感を持ってもらえるよう安全運転を心掛けたい」と会社の再出発の日に任せられた大役へ気を引き締めた。

 山本さんは大学を卒業後、旅館やゴルフ場勤務を経て3年前にのと鉄道に入社。当初は運輸係として穴水駅で信号を変える仕事を担当していたが、運転士を志して国家試験に合格。ただ、元日の地震で2月に予定されていたデビューが延期された。

 全線運行再開が決まると、一番列車の運転士は「これからを担う新人がふさわしい」(小林栄一常務兼鉄道部長)と山本さんに決定。5日、自身が乗車する車両の点検を進めた山本さんは「気負いすぎず、目の前の運転に集中したい」と出番を心待ちにした。

 国などの調査によると、地震を受け、のと鉄道ではレールの損傷、線路脇の土砂崩落などが計27カ所確認された。小林常務によると、従来の復旧工事は線路に沿って順次作業する方法が多い一方、今回は線路を保有するJR西日本が複数の工事を同時並行で進めたという。

 利用客に沿線の高校に通学する生徒が多いことから、小林常務は「復旧には1年以上かかると思っていたが、入学式に間に合って良かった。関係者の尽力に感謝したい」と話した。

 6日に営業運転を再開する能登中島―穴水間は、線路の損傷が激しかったため、速度を落として運行される。所要時間は従来より5分ほど長い45分で、1日の運行本数は地震前から3往復減の14往復となる。

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