生徒の校歌「音程が低い」赴任した中学校長、始業式で抱いた違和感 もとの楽譜を調べてみたら 兵庫・姫路

校歌の古い楽譜を見つけた黒田裕治校長=城山中学校

 はじまりは始業式で抱いた小さな違和感だった-。姫路市立城山中学校(兵庫県姫路市飾東町豊国)の校歌が、本来とは異なる音域で歌われていることを、同校の黒田裕治校長(59)が突き止めた。今年2月に発見された古い楽譜には、より高い調性となるニ長調で記されていた。いつ、どのような理由で改変されたのか。学校のシンボルにまつわる謎に迫った。(森下陽介)

 同校は1948年創立。校歌は60年に制定され、選詞を姫路商業高校の松井利男・初代校長が担った。また同市出身の小説家椎名麟三のミュージカル「姫山物語」に曲を付けた同高の秋月直胤(なおかず)元教諭が作曲した。

 昨年4月に城山中へ赴任した黒田校長は、始業式で生徒が歌う校歌に違和感を覚えた。「音域が低い。若々しい中学生の声域なら、もう少し高くていい」

 その疑問は今年2月に校長室の鍵の掛かった書架から見つかった、1冊の小冊子によって解消される。市内の小中学校の校歌をまとめた93年発行の「ハリマの里」で、城山中の校歌の楽譜は現在のハ長調よりも高音域のニ長調で紹介されていた。「はつらつとした感じ」「元気いっぱい歌える」といった同冊子音楽部門の担当者によるコメントも記されていた。

 ではなぜ、改変があったのか。

 市内の吹奏楽団「姫路ウインドアンサンブル」で指揮者も務める黒田校長は「変声期の男子生徒への配慮や、アルトリコーダーで演奏しやすくするためでは」と推測。事実、小冊子に掲載されていた校歌に関するアンケート結果では、生徒の3割近くが「歌いにくい」と答えていた。

 約20年前、生徒に配られた楽譜ではニ長調で記されていたことから、その後に変更されたと考えられる。同校では2024年度の入学式から、久しぶりに本来の形に戻った校歌が歌われる予定という。

 「はやりの要素を取り入れたり歌いやすくしたりと改変は悪いことではないが、オリジナルを継承することも大切」と黒田校長。「これまでより明るい響きで歌われていくはず」と期待している。

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