大分県が猛暑に強いシイタケ新品種を開発 温暖化で主流タイプの生産量が減少傾向【大分県】

猛暑に強い新品種からつくった乾シイタケを見せる県きのこグループの山下和久上席主幹研究員=豊後大野市三重町

 大分県は代表的な特産の原木シイタケで、猛暑に強い新しい品種を開発した。県内で主流の民間製は温暖化の影響を受け、生産量が減少傾向にある。県の気候に合った独自のタイプが必要と判断した。開発に協力した大手種菌メーカーが、今年から地場の生産者に販売を始めた。県の品種が実用化されるのは初めて。「シイタケ王国」の需要を捉えて普及するかが注目される。

 県が昨年9月、農林水産省に品種登録を申請した。名称は「9―46(仮)」。県によると、シイタケ菌を気温40度の環境に置いた試験で、生育にほとんど影響が出なかった。県内で主に栽培されている3品種は、成長の度合いが約3割落ちたという。

 新品種は夏場の酷暑を乗り越えて、収穫期の秋に発生量を落とさない効果が期待されている。形や品質も大型の肉厚で崩れにくく、上級品としての販売がしやすい。収穫2年目でも、サイズが小さくならない栽培結果が出ている。

 県農林水産研究指導センターきのこグループ(豊後大野市三重町)が、2013年度から開発を進めてきた。

 暑さへの耐久性が見込める複数の品種を交配し、新株をつくった。原木で育て、生じたシイタケの形、量、食味などをみて2回にわたり選抜。20年度から県西部、南部などの生産者5人に委託して試験栽培していた。

 選抜に協力した種菌メーカー・森産業(群馬県桐生市)が今年1月から、大分県内向けに種駒計100万個の販売を始めた。駒打ちやほだ木の伏せ込み期間を経て、本格的に収穫が始まるのは1年半後の見通し。

 これまでも県が開発した品種は二つある。だが、品質や収穫量などに優れる民間製が支持され、販売実績はない。今回は民間メーカーの知見も取り入れて市場への浸透を図る。

 きのこグループ上席主幹研究員の山下和久さん(57)は「厳しい暑さへの対応は生産現場のニーズも高い。ブランド化して売り出したい」と語った。

<メモ>

 林野庁によると、2022年の県内の乾シイタケ生産量は769トンで、ピークだった40年前の約2割にとどまっている。23年産は春と秋に高温に見舞われ、過去最少を更新する見込み。      

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