不可能ではない(4月6日)

 田畑に肥料をまいたり、道路や橋が壊れていないか確認したり。明かりをつけて飛べば、夜空を彩るショーにも。「ドローン」は、暮らしの伴走者的な存在になりつつある▼英語で「オスの蜂」を意味する。「ブーン」と舞う様子から名付けられた。若者が減った山あいで荷物を運ぶ。豪雨や地震で被災した現場を、人に代わって調べる―。近未来を便利にする実証実験が着々と進む。人手不足を補い、復旧作業の担い手となる日も遠くはないだろう▼他の虫と比べてみると、蜂は体の大きさの割に羽が小さい。例えば野菜や果物の受粉を助けるマルハナバチ。丸くてずんぐりしていて、なぜ浮くのか。昔から謎とされてきた。動きは軽やか。時に宙返りも見せる。上下にパタパタと羽ばたく。根元からねじるような複雑な動きも加えて飛ぶから可能という▼原発の原子炉格納容器に先頃、ドローンが入り、溶け落ちた核燃料の残骸とみられる物体を空気中で初めて撮影した。今や戦地にも駆り出されるが、蜂の一刺しを地でいく一点攻撃の末路が自爆では、新鋭機器の立つ瀬がない。社会の進化のためにこそ飛び立って。ドローンに、どう猛なスズメバチの遺伝子はいらない。<2024.4・6>

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