感電・爆発恐れで放水できず鎮火まで20時間…全国でもまれ、蓄電施設火災の消火活動は難航を極めた 伊佐

全焼した太陽光発電所の倉庫。周囲にはソーラーパネルが並ぶ=4日午後2時25分ごろ、伊佐市大口大田

 鹿児島県伊佐市大口大田の大規模太陽光発電所(メガソーラー)で、夜間売電するための蓄電施設が炎上した3月27日の火災は、鎮火まで約20時間を要した。爆発で消防士4人が負傷し、さらなる二次被害を警戒して消火活動がままならなかったからだ。経済産業省九州産業保安監督部(福岡市)によると、メガソーラーの建物火災は県内では初めてで全国的にもまれだという。

 伊佐湧水消防組合によると、27日午後6時すぎ、通報を受けた隊員10人が現場に駆けつけた。リチウムイオン蓄電池など蓄電設備を備えた倉庫の隙間や換気口から白煙が上がっていた。火の手は見えなかった。

 倉庫内は煙で視界が悪かった。内部の温度を確認した上で隊員が排煙機器のホースで煙を排出。いったん止めて、ホース位置を調整していたところ爆発した。熱風と衝撃で入口付近の4人が負傷。防火衣やグローブを着けていたにも関わらず、顔や手に中等症のやけどを負い2人は入院した。

 蓄電施設の火災は感電の恐れがあり放水できない。一般的には、数メートルの距離まで近づいて砂や消火器を使う。だが今回は倉庫が激しく燃えており隊員たちは再爆発を警戒、約20時間後の28日午後2時35分ごろまで近づけなかった。

 現場を指揮した同組合大口消防署の男性幹部は、数回爆発音を聞いたという。「隊員は万全の装備をしていたが一瞬で負傷した。鎮火まで見ていることしかできず、手をつけられなかった」と振り返った。

 発電所は2013年に伊佐市の公募で選ばれた市有地活用事業。17年2月に稼働した当時の事業計画によると、総出力は1200キロワット。昼は一般家庭400世帯分相当の容量6400キロワット時のリチウムイオン蓄電池に充電し、午後6時から6時間、九州電力に売電する国内初の仕組みを採用した。総事業費は約7億5000万円。一部に国の補助金を使った。ハヤシエネルギーシステム(鹿児島市)が運営する。

 経産省によると、国内の太陽光発電所(10キロワット以上)で設備の異常による火災は21年度が2件、22年度が1件だった。従来は配線など機器の焼損が目立ち、蓄電設備が入る建物の火災は「非常に珍しい」(担当者)。

 同組合によると、慎重に原因を究明するため専門家が実況見分に加わる。伊佐湧水署と同組合が主体となり、9日に総務省消防庁の消防研究センター(東京)、経産省、蓄電池メーカーを交えて実施する。

■鹿児島県内の太陽光発電

 鹿児島県内の太陽光発電所の導入件数は2012年度の4353件(3万7043キロワット)から23年9月時点で8万1670件(246万4424キロワット)にまで伸びた。うち出力が千キロワット(1メガワット)以上のメガソーラーは、23年9月時点で391件(111万6897キロワット)。

炎を上げて燃える太陽光発電所の倉庫=3月27日、伊佐市大口大田(住民提供)
【地図】伊佐市の位置を地図で確認する

© 株式会社南日本新聞社