「仕事内容のわりに賃金が低い」 若手が定着しにくい"人手不足"の介護現場 「DX」でスタッフの負担軽減を図る施設も 課題に「デジタル格差」

少子高齢化が進む中、人手不足が深刻な問題となっている「介護業界」。人材確保や職場環境の改善などが課題となっています。こうした中、デジタル技術を活用したDX、デジタルトランスフォーメーションが、介護の現場でも注目を集めています。

2月、鳥取県鳥取市にあるサービス付き高齢者向け住宅で行われたのは、入居者の見守りをサポートするシステムの説明会。

このシステムでは、各部屋にカメラとセンサーが設置されていて、入居者の行動や危険な動作、体の異常などを検知すると、パソコンやスマホなどの端末に知らせます。

また、映像は、プライバシーを守るためシルエットになっています。

入居者には、スタッフに何回も訪問されることをストレスに感じる人もいて、このシステムを使えば、見回りの回数を減らせ、スタッフの負担軽減も期待できるということです。

シェアグレイス商栄 小澤栄稔 施設長
「実は介護職の不足というところもありまして、十分な介護ができないのではないかという不安から、今回、機械の力を借りようかというところで」

「介護労働安定センター」が実施した、令和4年度の介護労働実態調査の結果を見てみると、労働者の労働条件や仕事の負担に関する悩みについては、「人手が足りない」が最も多い結果も。

次いで、「仕事内容のわりに賃金が低い」、「身体的負担が大きい」と続きます。

こうした厳しい環境の介護業界でいま注目を集めているのが、デジタル技術を活用して業務の効率化や生産性向上などにつなげる「介護DX」です。

鳥取県岩美町にある介護老人福祉施設「岩井あすなろ」では。

スタッフ
「味はどう?分からん?はい、どうぞ」

従来型の大部屋のフロアでは、45人が入居していて、日中は6人~8人のスタッフで入居者の介助や体調管理、洗濯、掃除など様々な仕事をこなしています。

岩井あすなろ 但井達恵さん
「一般的にやはり介護はきついとか、いろんな時間が取れないとか休みが取れないとかという問題があると思うので、なかなか若い方に定着しないです」

ここでも人手不足が深刻な問題に。

そこで、2022年に導入したのが、「ライブコネクト」という介護支援システムです。

ベッドに設置した複数のセンサーにより、入居者の動きを検知したり、心拍や呼吸数などを把握したりすることができます。

また、管理画面は分かりやすいイラストになっています。

岩井あすなろ 加藤孝明 リーダー介護士
「(昔は)夜間は1時間に1回、巡視を行っておりましたが、機器を導入することによって2時間に1回に減らすことができ、職員の身体的負担の軽減になっております」

このシステムの導入で、スタッフが効率的に動けるようになったほか、睡眠状況などのデータを分析し、利用者へのきめ細かい介護も可能になったといいます。

岩井あすなろ 但井達恵さん
「以前で言う勘や長年培ってきた技術っていうだけではなくて、(データによる)根拠を持ってケアするってことで同じケアがしていけるというツールにはこのICTというものを使うとなるのかなと思ってます」

しかし、便利な反面、課題もあるようです。

岩井あすなろ 加藤孝明 リーダー介護士
「(デジタルが)苦手な者がいるのも現実問題であります。そういったデジタルの格差をなくして、これからは、その安定した介護サービスが提供できるようにしていきたいと思っております」

また、先ほどの高齢者向け住宅のスタッフは、「機械は冷たい」と感じる人へのフォローも必要と話します。

シェアグレイス商栄 小澤栄稔 施設長
「機械と人間というところのあたたかさと、デジタルの安心を掛け合わせて出来ればと考えています」

人手不足に悩む介護現場にとって救世主となっている「介護DX」。

まだ課題はありますが、今後も広がりをみせそうです。

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