重光葵ゆかりの古民家改装、別府市にカフェがオープン 「地域の輪を広げる拠点に」【大分県】

カフェ「茶房 湯治人」をオープンした重光宏哉さん=別府市中島町
古民家ならではの雰囲気を感じられる空間にした「茶房 湯治人」

 【別府】別府市中島町に古民家を改装したカフェ「茶房 湯治人(とうじびと)」がオープンした。戦前から戦後にかけて外交官として活躍した重光葵(まもる)(杵築市出身)にゆかりのある家屋。店主の重光宏哉さん(22)は「古き良き雰囲気を感じられる空間を目指した。ゆっくりと過ごしてほしい」と話している。

 古民家(木造2階)は築約80年。葵が別府市に滞在する際の「別荘」として、交友のあったレストラン東洋軒(同市石垣東)の創業者、宮本四郎さん(故人)が提供した。2人の交流にちなんで「友情の家」と名付けられている。

 1階部分(約109平方メートル)で営業し、抹茶やコーヒー、和菓子、ぜんざい、小倉トーストを提供する。16席。「どの席からもきれいな庭が見られるレイアウトが特徴」(重光さん)となっている。

 重光さんは別府大3年だった2022年、知人から「葵と同じ重光姓」という理由で建物を紹介された。所有者と会話したところ住めることが分かり現在、同家屋で暮らしている。

 国の登録有形文化財「重光家住宅主屋」(国東市国見町)で生まれ育ち、歴史のある建物に子どもの頃から親しみを感じていたという。同大在学時に文化財を専攻。古い建物が地域から次々と姿を消す現状に問題意識を覚えた。「友情の家」を活用できる手段がないかと考え、以前からの夢でもあったカフェの開店を思い立った。

 在学時に複数のアルバイトを掛け持ちして資金をため、改装や備品調達など準備に奔走。喫茶店を営む人と知り合いになり、メニューなどのアドバイスを受けた。掃除の手伝いや、寄付をしてくれる友人もいた。「自分で何とかしなければならないことも多く大変だったが、周りの人の助けでここまで来られた」

 卒業前の3月中旬にオープン。店では通常の営業のほか、定期的に茶会などのイベントも開いていく予定だ。

 大学生活を終え、今後はカフェの営業と並行して実家のある国東市での活動にも力を入れていきたいと考えている。「歴史のある建物は地域にとっての宝だと多くの人に感じてもらいたい。地域の輪を広げる拠点になることができれば」と新しい挑戦に意欲を燃やしている。

<メモ>

 所在地は別府市中島町16の10。営業は午前11時~午後6時。火―木曜は定休日。

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