存続の道(4月7日)

 初の快挙に地元は沸いた。田村市都路町のスポ少は昨夏、ソフトボールの県大会を制した。メンバーは都路小の全校生35人のうちの17人。主力となった6年生8人はこの春、中学校に進んだ。チームの実力を維持できるかどうか、心配が広がる▼子どもが、なかなか戻ってこない―。原発事故で避難を迫られた地域の悩みは共通する。避難指示が約3年間と他に比べて短く、解除から10年が過ぎた都路町も例外ではない。児童数は災禍に見舞われた年の141人から、4分の1に落ち込んでいる。市教委は学校存続に向け、郷土学習を充実させた。地域の人材を教壇に迎えるなどの努力も続けてきた▼今年度から、市内の他地域から都路小、都路中への就学を認めた。少人数の学びに関心を持つ児童生徒に門戸を開く。新たな取り組みを各地で伝えている。姉妹都市を結ぶ東京都中野区の学校と、オンラインによる合同授業も始める。修学旅行では現地を訪ねる計画だ▼あの手この手で、子どもの声を地域に響かせたい。大振りで本塁打を狙うより、知恵と工夫で地道に単打を重ね、少子化にも打ち勝つ。小規模校が全県制覇を遂げた潜在力がある。成せば、いつかきっと成る。<2024.4・7>

© 株式会社福島民報社