桜が咲くとクロはシーズン終了…じゃなかった。日南市の水島はまさに今から。半信半疑でやったら10匹以上釣れた

約6時間で10匹以上の釣果にびっくり=3月28日午前、日南市水島

〈あゆLOVEフィッシング―上園あゆみ〉

 桜が咲き始め、すっかり春の陽気となった。身近な草花の開花や店先の野菜コーナーが、釣り人にとって対象魚が入れ替わる合図となることがある。

 例えば、淡い紫色の藤の花が山肌を彩るようになると、渓流釣りの始まり。これは藤が咲き出す時期から川の水温が上がって、餌となる虫が飛び始めることに由来する。花を見て美しいと感じる人がいる一方で、いよいよ渓流釣りの本格シーズンと意気込む人がいるのだ。ソバの花が咲き始めると、腹子を抱えたアユが川を下り始める。その頃になると水温が下がり始め、1年でわずか4カ月間のアユ釣りが終わりを迎える。風情のある植物でも、まだ咲いてくれるなと願う人がいる。

 魚によっては地域で釣れる時期が異なるものもいる。私の大好きなクロ(メジナ、グレ)はその一つ。南薩では紅葉の季節を迎えるとシーズンイン。そして桜の咲く頃に終わりを迎える。まさに今の時期はクロとの別れを惜しむ時期だが、隣の宮崎県日南市の水島はそうではない。桜の咲く頃から梅雨頃までが1年で最もよく釣れる時期なのだという。

 今年の冬は鹿児島大学大学院の修了を控えていたため、なかなか時間が取れず、気がついたら鹿児島でのクロ釣りシーズンが終わろうとしていた。そこで情報の入った水島へと足を延ばした。

 御影石のようなツルッとした岩場に降り立ち大きく息を吸ったとき、寒気で鼻の奥がツンとするいつもの感覚がない。こんなに暖かい気候で果たして釣れるのだろうか? 半信半疑でさおを出すと、なんと開始10分で、お目当てのクロが釣れた。まぐれかもしれないと思ったが、その後も釣れ続き、6時間ほどで小型も含めて10匹以上の釣果。これには驚いた。

 追いかけて遠征すれば、いろんな魚を長い季節楽しめそうだ。この春、私は大学院を無事に卒業した。しかし、今季のクロ釣りはまだまだ卒業しなくてよさそうだ。

(別カット)約6時間で10匹以上の釣果にびっくり=3月28日午前、日南市水島

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