3Dプリンタ・ドローン・VR…子どもは無料で利用可能の「デジタル施設」オープン 背景に“IT人材不足” 過疎化が進むまちで新たな挑戦

プログラミングにグラフィックデザインにドローン。
子ども達が気軽にデジタルテクノロジーに触れられる場所が、今月、島根県雲南市のショッピングセンターにオープンします。
しかも、無料で利用できる。過疎化も進む雲南市で始まるこの事業の狙いは?

真剣な表情でパソコンに向かう小学生。ここは、雲南市にあるショッピングセンター「マルシェリーズ」の一角。
ここに、4月9日、子どものためのデジタル施設「ピコテラス」がオープンします。

最新のソフトやアプリが入ったパソコンや、3Dプリンターなど、様々なデジタル機器が揃うこの施設、10歳から18歳までの子どもであれば、誰でも無料で利用できます。

エンター 杉村卓哉 代表理事
「テクノロジーとかデジタルというと、結構、YouTubeとかゲームで消費してばかりだが、子ども達にテクノロジーを使って、どんどんアウトプットをしてほしい」

ピコテラスには、グラフィックや映像ソフトが入った高性能パソコン、3DプリンタにドローンにVRと、子どもたちが好きなこと、やりたいことに自由にチャレンジできる環境が整っています。

エンター 杉村卓哉 代表理事
「例えば、3Dプリンターでものを生成して作り出すとか、Tシャツとか、自ら考えて、これをテクノロジーを使ってアウトプットする」

オープンを前に開催された内覧会。
参加した子どもたちは全員小学生、パソコンを操作し3Dプリンターを使った名札やオリジナルTシャツのデザインに挑戦しました。

パソコンを使って何かを作る体験は初めてという子どもがほとんどでしたが、あっという間にソフトを使いこなし、自分らしさいっぱいのデザインを作りあげていきます。

参加した子ども
Q.やってみてどうだった?
「楽しい」
「出来て嬉しいから楽しかった」

ピコテラスは、様々なデジタルテクノロジーを体験する場所ですが、授業や講座といったカリキュラムはありません。
替わりに、メンターと呼ばれるスタッフがいて、子ども達がやりたいことをサポートします。

メンターのひとり、阿部至さん。
東京から雲南市にIターンしてきた阿部さんは、フリーで活躍するデザイナーです。

ピコテラス メンター 阿部至さん
「雲南市は自然とか豊かだが、こういうデジタルテクノロジーといったものはないので、是非、体験してもらって、ひとつでもいいので新しい発見があったらいいかなと思っている」

いまや生活のあらゆる場面に登場するデジタルテクノロジー。
しかし、経済産業省によると、IT人材は2030年には最大で79万人が不足すると言われています。

坪内総合ビジネスカレッジ 竹谷有樹子 副校長
「今、ITに関連する業務というのは様々な業種の会社にもございますので、ITの技術を勉強した学生さんが多く求められている状況です」
「そして、ITの方はプログラミング技術があれば良いというものでもなくて、様々なチームワーク、コミュニケーションがとれる人材が求められております」

ピコテラス メンター 阿部至さん
「3Dプリンターとかドローンって、何に使ったらおもしろいかなっていう、まだまだ新しいテクノロジーだから、そこからも考えられるはず。それが、子どもたちからでたら『ピコテラス、万歳!』」

授業や講座のないピコテラス。
ここは、単にデジタルテクノロジーを学ぶ場所ではなく、遊びやものづくりを通して子どもたちならではの自由なアイデアを生み出す場所です。

エンター 杉村卓哉 代表理事
「子どもたちが考えるアイデア、出てくるものは、きっと地域の課題解決につながるイノベーションになると思う。大人と子供で、温故知新みたいな形で一緒に素敵なものを、地方から発信できるような拠点になれば」

ピコテラスがあるショッピングセンターの同じフロアには、高齢者のためのリハビリプログラム「ショッピングリハビリ」の会社も。
こちらも、ピコテラスと同じ杉村さんが手掛けています。

エンター 杉村卓哉 代表理事
「次の日本の未来を担うのは、やっぱり子どもたち、というところで、都市部と地方のテクノロジーやプログラミングの教育格差があると知って、じっとしていられないということで、今回、こういく事業にチャレンジした」

ピコテラスの内覧会には雲南市の石飛市長も訪れ、デジタル機器を自ら体験、期待感を示しました。

雲南市 石飛厚志 市長
「子どもから若い世代、そうした方々が集っていく。そして、お年寄りも一緒になって、明るく過ごせるそんな空間になるんじゃないかと期待している」

内覧会に参加した小学生
Q.自分の作品を見てどう思う?
「かわいい」
「いい感じにできたと思います」

高齢化が進むまちで始まった子ども達に向けた新たな取組み。
最新デジタル機器を入口にどんなアイデアが生まれるのか、可能性は無限に広がります。

エンター 杉村卓哉 代表理事
「やっぱり、子どもたちの可能性をすごく感じたし、これからの雲南市の未来に光をあててくれると感じた」

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