地方をつなぐ翼「FDA」大手は業績V字回復だが…「かつてのようなビジネス客は期待できない」 苦境をどうする?ローカル航空ならではの戦略とは

地方をつなぐ翼・フジドリームエアラインズ、略してFDA。
3月31日からの夏ダイヤで、出雲を発着する路線は3つに拡大し、旅の選択肢も広がります。今回、取材班はFDAの名古屋本社に潜入し、空のお仕事の舞台裏に密着してきました。

愛知県北部、県営名古屋空港内にあるFDA名古屋本社。
全てのフライト管理を行ういわばFDAの心臓部です。

「よろしくお願いします!」

パイロットは出発1時間前になるとブリーフィング、いわゆる打ち合わせを行い、目的地までの気象情報や飛行ルートなどを確認します。

その後、客室乗務員も交えて、サービス内容や乗客の情報まで事細かにチェック。

「最悪機内サービスできない可能性もなきにしもあらず。それでいきますね。」
「はい!」

取材したこの日は、前線を伴った低気圧の影響で日本列島は広い範囲で春の嵐に。
揺れも伴うフライトになることが予想されたため、いつもより入念に確認が行われていました。

フジドリームエアラインズ 運航乗員部 篠田匠 副操縦士
「安全性を確保した上でプラスの要素で、定時性・お客様の快適性・飛行機の運航の効率性・燃料の経済性を軸として考えています」

2009年に運航を開始したFDAは、静岡と名古屋に拠点を置く地域航空会社。
今年の夏ダイヤでは国内15都市に乗り入れ、26路線で運航します。

運航乗務員
「皆様、きょうもフジドリームエアラインズをご利用いただきましてありがとうございます」

所属する客室乗務員、パイロットはそれぞれ130人ほど。大手航空会社に比べると少数精鋭です。

使用される機体はブラジル・エンブラエル社のリージョナルジェット。
座席数が100席未満の小型ジェット機で、15機ある機体の塗装は全て異なります。

土江諒記者
「飛行機自体は小型なんですが、足元はかなり広々としています。快適です。」

天井も広く、快適性も十分。
そして、国内キャリアでは珍しい無料の軽食がついてきます。

一方で、客室乗務員は少し大変。
2人体制でフライト時間が短い路線も多いため、素早いサービスが求められます。

3歳の息子を育てるママさんCA、中村さん。
コロナ禍、マスク姿での接客は難しかったようで…。

フジドリームエアラインズ 客室乗員部 中村華 先任客室乗務員
「笑顔で接客はさせていただいてますが、なかなかこちらの思いが100%伝わらないことがあり、もどかしさも感じていました。コロナ禍が明けて、ようやくお互い素顔でお客様をお迎えできるようになって。本当によかったなと感じているところですね」

FDAが出雲に乗り入れを始めたのが2015年。
静岡・仙台路線は今年1月で運航を一旦ストップするも、名古屋路線は山陰と中京圏を直結する最も早い交通手段として支持され、FDAの全路線の平均を上回る搭乗率を記録しています。

その一方で…。

フジドリームエアラインズ 楠瀬俊一社長
「コロナが明けても決して万々歳ということではありません。地方路線を結んでいる会社ですので、まだまだお客様の戻り方が国際線・羽田発着に比べると全然遅いんです」

厳しさを滲ませたのは、FDAの楠瀬俊一社長です。
新型コロナにより大打撃を受けた航空業界でしたが、去年、一連の対策の緩和で国際線や羽田発着の基幹路線は復調。
国内大手2社の業績はコロナ禍以前の水準にV字回復しました。

一方、国内線、かつ地方路線のみのFDAは未だ苦戦を強いられていて、3月、保有していた機体を1機退役させました。

フジドリームエアラインズ 楠瀬俊一社長
「かつてのようなビジネス客は期待できないということで、少し絵がコロナ前と変わりました。一旦ここは身を縮めて、筋肉質な体質にして、路線ごとのエバリュエーション=評価を厳しくやったうえで、どの路線を続けていくのが会社にとって安定するのか考えていかなければ」

そうした中、今年の夏ダイヤでは出雲・静岡路線が再開。
そして、中部国際空港・通称セントレアとを結ぶ新規路線が就航し、愛知県には計1日3往復乗り入れるという、強気ともいえる戦略を打ち出しています。

フジドリームエアラインズ 楠瀬俊一社長
「中京圏から出雲方向に出かけるお客さんの裾野を広げるという意味と、セントレアは何といっても国際空港ですから。国際線が数多く乗り入れてますので、出雲に向けてのインバウンドのお客さんを取り込む。あるいは、島根県からセントレアで国際線乗り継いで他の地域にも行っていただくと」

中京圏からの利用客数の底上げを図り、更にはセントレアをハブ空港として出雲へのインバウンド出雲からのアウトバウンド、双方の動きを活性化したい考えです。

フジドリームエアラインズ 楠瀬俊一社長
「やはり八百万の神に関する物語は、私は外国人には結構ウケるんじゃないかと思いますね。まだまだお客様を増やせる余地はあるんじゃないかなと思って、大変期待をしております」

地方と地方を結ぶ翼・FDA。
独自の戦略を展開しながら、きょうも日本の空を飛び続けます。

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