ゆがんだ町復旧見えず 液状化の内灘・西荒屋 初の住民意向調査

地震発生から3カ月が経過しても道路が波打ったままの県道=6日、内灘町西荒屋

  ●それでも居住希望69%

  ●忘れられた被災地

 能登半島地震による液状化が深刻な内灘町西荒屋地区が震災後初めて実施した住民意向調査で、69.2%が「住み続けたい」「戻りたい」と答えたことが7日分かった。土地が大きくゆがみ、今回の震災被害を象徴する場所の一つだが、発生から3カ月が過ぎても復旧の道筋は見えず、住民の不安は消えないまま。大半が地元での生活を望むが、「奥能登が優先され、内灘は忘れられている」と不満の声が上がる。町側は「単独では対処できない」と国主導の復興を求めており、大規模災害への対応の難しさが浮き彫りとなっている。

 液状化で壊滅的な打撃を受けた内灘町西荒屋小前の県道松任宇ノ気線は、今も道路が波打ち、沿道の住宅は大きく傾いた状態が続いている。震源から100キロ離れた金沢近郊にも地震の深い爪痕が残る。

  ●「外の景色がつらい」

 「地震から3カ月たっても、あまり変わっていない。外に出て景色を見るとつらくなる」。西荒屋の南善弘さんは(72)はこう嘆く。4月中旬から、かほく市にアパートを借りて妻と暮らす予定で「また戻ってきたいが、早期復旧は難しいと思う」と声を落とした。

 西荒屋地区の住民意向調査は、3月下旬までに全272世帯のうち121世帯(44.5%)が回答。今後の生活について尋ねたところ、「西荒屋に住み続けたい」が39.2%、「戻りたい」が30.0%だった。「転出したい」は10.8%で、「今後の状況を見て判断する」など、その他が20.0%となった。

 地震前の住所に住み続けている人は30.3%で、避難先47.5%、転出先7.4%、仮設住宅2.5%などとなっており、地区の再興にはどれだけの住民に帰ってきてもらえるかが重要になる。

 住民からは上下水道、道路の早期復旧に関する要望が多く寄せられ、インフラや生活再建の見通しが立たないことへの不安がうかがえたという。

  ●支援金対象外に不満

 調査では、液状化対策の地盤改良に対する公的支援や、義援金の早期配分を求める意見もあった。

 また、政府が最大300万円から同600万円に増額する生活再建支援給付の対象に、内灘町は含まれていない。県が能登6市町の全住民に配る5万円の義援金の枠からも外れており、こうした点にも住民は不満を募らせる。

 町内の40代男性は「行政も業者も『奥能登が優先』という雰囲気がある」と語る。町が復旧状況を報告するため、3月に被災地区で開いた説明会では「内灘が支給対象に入っていないのはおかしい。不公平だ」と憤る住民もいた。

 町は国土交通省による液状化の調査結果を見て、国、県と連携して復旧、復興に向けた対策を検討する方針だ。川口克則町長は長丁場になるとの見方を示した上で「まちづくりの方向性、液状化の対策は住民と相談して決めたい」と話している。

 

 ★内灘町西荒屋地区の地震被害 液状化に加えて、広い範囲で地盤が水平方向にずれる「側方流動」という現象が起き、県道松任宇ノ気線沿いを中心に住宅や道路が甚大な被害を受けた。建物の応急危険度判定では町内で最も多い161件が赤色の「危険」と判定された。

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