公立進学校をサッカー強豪に育てた同級生監督、ピッチに別れ 長田高・森さん、神戸高・林さん 小中でともにプレー「始めたのも、終わるも一緒」

グラウンドで互いをねぎらう神戸高校サッカー部前監督の林啓太さん(左)と長田高サッカー部前監督の森郁二さん=神戸市長田区池田谷町2、長田高校

 兵庫県内の公立高校サッカー部を長年率いてきた長田高の森郁二さん(65)と神戸高の林啓太さん(65)が今春、指導の第一線を退いた。60歳の定年退職後も再任用教員として残り、昨年は神戸高が県高校総体で4強に進むと、長田高は県高校選手権で8強入り。最後まで公立強豪校としての意地を見せた。小中学校の同級生だった2人は「サッカーを始めたのも、終わるも一緒。互いの存在が大きかった」としみじみと振り返った。(尾藤央一) ### ■始まりは神戸市立北須磨小

 2人とも神戸市立北須磨小でサッカーを始めた。森さんは得意のヘディングで体を張り、林さんはトップ下や前線で得点に絡むプレーヤー。同市立高倉中でもサッカーに明け暮れた。高校と大学は違ったが、それぞれ教師の道に。サッカー部では監督を担うようになった。 ### ■3度、ベスト8に

 森さんは神戸北高や加古川東高で監督を経験し、長田高では2008年から16年間指導。「体育で毎回2.5キロを走る周回走を通じて、体力のある選手が多かった。前線からプレスをかけ、相手の嫌がるサッカーを目指した」という。13年には県高校総体で4強入りし、近畿大会へ。受験勉強などで春に引退する選手も多い中、毎年秋に行われる県高校選手権では3度、ベスト8に導いた。 ### ■28年ぶりの4強

 林さんは県立西宮高を振り出しに夢野台高を経て長田高で指揮を執った。長田高では05年に県高校選手権で28年ぶりの4強に進出。森さんと入れ替わる形で08年、長田高から母校の神戸高へ異動した。公立の進学校を率いる上で大切にしたことは守備といい「体力的には強豪私学と差はない。戦術理解力もあったので守備に重きを置いた」と組織的な戦術を落とし込んだ。

 1913年に創部し、全国優勝の経験もある伝統校で2015年、23年の県高校総体では準決勝に進出。特に全国高校総体が県内開催だった15年は、38年ぶりの全国総体出場まであと一歩に迫った。 ### ■最後の日は両校で練習試合

 ともに監督最後の日となった3月31日は、長田高校(神戸市長田区)で両校による練習試合が行われた。OBや保護者らが訪れ、花束を受け取った。「勝つことに対して、勉強と同じ執念を持ってできる子たちに期待したい」と森さん。林さんは「しばらくはゆっくりするが、また試合は見に来る」と話した。

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