【南相馬の化石】新たな観光資源に(4月8日)

 南相馬市で貴重な化石の発見が相次いでいる。太古の歴史を学んだり、発掘体験の場を設けたりして「化石の里」としての魅力を高め、観光や地域振興に活用すべきだ。

 鹿島区から見つかったオウムガイ類の化石2種は、中生代ジュラ紀と白亜紀の境界(約1億4500万年前)付近に生息していた国内初の種で、一つは中生代では国内最大級の直径30センチ超とみられている。2022(令和4)年4月には、ジュラ紀後期(約1億6000万年前)の新属・新種の植物化石「キムリエラ・デンシフォリア」が原町区で見つかったことが発表され、話題を呼んだ。

 約3億5900万年前の古生代から約1億1700万年前の新生代までの地層が市内に分布し、古くから多種多様な化石が発見されている。一つの地域でさまざまな地質時代の化石を発掘可能な極めて恵まれた環境にある。稀有な資源を地域活性化に生かさない手はない。

 市博物館は所蔵する化石の一部を常設展示室で紹介し、新種や希少種が発見されるとロビーで特別公開してきた。市内ではアンモナイトを中心にした県立博物館移動展が昨年開催されたが、地元の化石を中心にした企画展は2019年以降、開かれていない。これまでの発見の成果をまとめた展示会を定期的に開催してはどうか。

 いわき市アンモナイトセンターのように、採掘できる現場を施設化し、気軽に体験できるようにすれば通年型の観光も可能になる。

 化石に関心を持つ人を増やす取り組みも必要だ。2002(平成14)年に発足した市内の化石研究団体・相馬中村層群研究会は重大な発見に関わり、日本古生物学会から貢献賞を受けている。子ども向けの採集体験イベントを通して人材育成に力を入れている。会員に講師を依頼するなどして、採集のノウハウを学校教育に積極的に取り入れるのも意義深い。子どもたちが化石に直接触れ、古里の宝を知るきっかけにもなるだろう。

 さまざまな機会を設けて化石に対する市民の関心も広げていきたい。新たな発見の可能性が高まり、市外から愛好者が訪れる機会も増える。旅館やホテルをはじめ関連事業者が活気づき、経済効果も期待できるはずだ。(平田団)

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