今は亡き級友しのび桜を眺め同級会 元東大助教授、震災で〝凱旋〟果たせず

横田さんら亡き友に献花し、思い出話をする同級生

 福島県南相馬市小高区の旧金房小の1958(昭和33)年3月卒生は7日、小高区飯崎のしだれ桜そばで、お花見を兼ねた同級会を開いた。「明君、約束を果たせたよ」。13年前、母校で講演する予定だった同級生で元東京大助教授の故横田明さんをしのび、思い出話に花を咲かせた。

 金房小は2011(平成23)年、当時の場所に移転して100年の節目で、3月28日に横田さんを迎えた記念講演を予定していた。直前に発生した東日本大震災で講演は中止、東京電力福島第1原発事故で小高区は避難区域になった。避難指示解除後は児童数の減少で金房小は再開することなく2021年に閉校し、老朽化のため2023年度に解体された。

 横田さんは製薬会社を経て東京大で細菌学の助教授を務めた。同級生は横田さんの〝凱旋(がいせん)〟を楽しみにしていたが、震災でかなわなかった。横田さんは「講演はできなかったけど学校近くのしだれ桜で、趣味のギターを披露したい」と友人に話していた。昨年7月に福島市で開かれた同級会にリモート参加した横田さんは、その直後、病気で急逝した。77歳だった。

 「明君の夢をかなえたい」と、白川ケイ子さん(77)=東京都在住=らが発起人となり、しだれ桜そばでの同級会の準備を進めてきた。7日は県内外から22人が集まった。横田さんの講演を企画した当時の金房小校長の津島義勝さん(65)=いわき市=も駆けつけた。

 桜を背景に記念撮影した参加者は横田さんはじめ、亡くなった同級生に献花し、黙とうをささげた。横田さんが披露したがっていた懐メロなどをみんなで歌った。「学校はなくなったが、思い出は消えない」と旧交を温めた。

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