【震災・原発事故13年】避難解除区域の市町村立学校 2024年度、小中生1000人超え 特色ある学び求め移住も

 福島県の東京電力福島第1原発事故で一時、避難区域となった地域にある市町村立学校に2024(令和6)年度は1021人の小中学生が通う。児童生徒数は事故発生前の2010(平成22)年春の7837人の1割強だが、大熊、浪江、富岡各町などで伸びている。就学前からの一貫教育や少人数教育などの特色と手厚い支援策が新住民を含めて一定の支持を得る一方、存続を危ぶむ声も。将来世代の存在は復興に欠かせず、各市町村は子どもを増やす取り組みを続けている。

 避難区域が設けられた地域にある市町村立学校の児童生徒数は【表】の通り。2023年度は県教委の統計、2024年度は福島民報社が各市町村に聞いた。避難先への移転や学校の統合、校舎の改修・新設などを経て地元で教育活動を再開。特色ある学びや給食・教材費の補助などの支援策を整え、帰還や転入する世帯を呼び込んでいる。

 大熊町は認定こども園を併設した小中一貫の義務教育学校「学び舎(や) ゆめの森」を2022年春に会津若松市で開校。2023年春に町内に移した。今春の在籍数は30人と開校時の7人の約4倍に当たる。このうち17人は町外からの移住世帯の子どもだ。町教育総務課によると、0~15歳までが最新の校舎で学べる環境や知的好奇心を育む学習が評価され、首都圏や京都府などからも入学者が集まっている。

 浪江町は2018年度に旧浪江東中を改修し、併設型小中学校「なみえ創成小・中」を開校した。毎年10人程度が転入し、在校者は増加傾向にある。町教育総務課は「少人数教育や制服支給など支援策が好評を得ている」とみる。富岡町は元々あった小中学校4校を富岡小と富岡中に統合。子ども1人当たり月1万5千円を支援している。2022年度の統合時の約1.5倍に当たる82人が通う。

 ただ、各市町村とも事故発生前の水準には届いていない。2012年度に戻った広野町の広野小は児童数141人、広野中は生徒数126人と2010年度の5割前後。広野中ではJFAアカデミー福島の男子も学んでいるが、町教委の担当者は「帰還の動きは頭打ちで、少子化の影響も大きい」と受け止める。

 飯舘村の義務教育学校「いいたて希望の里学園」の児童生徒のうち、村内に暮らすのは半数以下。避難先の福島、伊達両市などに通学バス10台を出しているが、経費の一部を復興予算で賄っており、継続には財源確保が課題だ。担当者は「バスが減ると村への通学を諦める子が出かねない」と懸念する。葛尾村教委は生活環境の整った避難先への定着が進み、帰村率が伸び悩んでいるとみている。

 この他、双葉町はいわき市に町立小中学校の仮設校舎を置き、38人が通う。町は5年後を目標に双葉中敷地に学校を整備し、町内での教育を再開する計画だ。広野町には県立中高一貫校のふたば未来学園中・高が開校している。

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 福島大教育推進機構の前川直哉准教授は、避難を経験した地域の子どもを増やすには「原発事故からの復興」という特殊性を考慮した上で、教育面に加えて女性の定住を後押しする政策が重要だと指摘する。同大人間発達文化学類の神山真由講師(教育行政学)は各自治体の教育に関心を持つ保護者が移住を決めやすいように「就労・子育て環境の充実が求められる」との見方を示している。

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