「あなた」と考える国際女性デー① 【学校・職場編】男子がリーダー、女性はお茶くみ… 「無意識の偏見」に意識を

性別に由来する生きづらさ(抜粋)

 国際女性デー(3月8日)に合わせ、長崎新聞社の双方向型報道窓口「ナガサキポスト」では、性別を理由にした先入観に接して「生きづらさ」を感じる人たちの声を募集した。学校や会社、家庭、地域、趣味の場面で抱いた「もやもや」と、その意味を研究者の見方を交えて考える。

 「クラスの委員長は男子、副委員長が女子。出席番号も男子のあいうえお順の後に女子」-。学生時代、男子がリーダーで、男子から記載されたクラス名簿に違和感を抱いた意見が20~60代の女性に多かった。

 「性別で分けない名簿」は、1999年の男女共同参画社会基本法の施行以降、県内でも広がり、公立高で2020年度、公立小中学校では23年度、導入率が100%に達した。それでも、回答者の中に過去の苦い記憶になっている模様。生徒会長や応援団長などの多くが男子だった点への疑問も目立った。

 キャリア研究所(福岡市)代表取締役の園田博美さんは、学校生活を「価値観を調整する大事なスタート地点」と強調。このような学校での経験が性別のイメージにつながり、社会に出た後の言動に影響を及ぼすとみる。

 「会社で『お茶くみ』『お客さまへのお茶だし』は女性の仕事といわれていたが、手が空いている人がすればいいのでは?」

 働く女性が接客や清掃などの補助的役割を求められたり、暗黙の了解のように担ったりしたという意見が、20~70代の幅広い年代から25件が寄せられた。
 これも「女性はこうすべき」「男性だから」というイメージが刷り込まれた言動の一つで、園田さんは「育った環境や学校での経験の影響で、性差による役割分担意識が潜在的に固定化されている」と指摘。こういった言動は無意識に相手を軽く扱った態度や発言になり、個人の仕事へのやる気をそぐことにつながる。

 園田さんによると、ある企業で「女性は結婚するかもしれないから」という理由で、本人が希望していた海外勤務を同期の男性に任せ、女性社員が「この会社にいても先がない」と退職した例があった。

 男性より営業成績が良いとやっかみを受けるため「成績を上げることを意図的に避けていた」(40代女性)。性別や勝手な思い込みを理由にチャンスを奪われ、結果的に「組織の発展にもネガティブな影響を与えてしまう」(園田さん)。

 「育ってくる環境の中で価値観は培われる。それをなくせというのは無理」。園田さんは、人それぞれの価値観の違いを踏まえた上で「無意識の偏見にまずは意識的になることが大切。まずは自分も持っているという認識を持つ必要がある」と指摘。誰もが持っているであろう偏見や思い込みに気づき、自らがそこに意識を向けることが必要だ。

◎アンケートの概要

 3月1~12日、グーグルフォームで実施し152人(女性71.1%、男性27%、未回答1.9%)が回答。20代が最多の27%で、50代(21.7%)、40代(19.1%)、60代(15.8%)など。居住地は長崎市が全体の5割を超え、諫早、佐世保、大村各市などと続き、九州内外が約6%。職業は学生、会社員、専業主婦・主夫、パート・アルバイトなど。

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