「あなた」と考える国際女性デー② 【家庭編】仕事終えても家の“仕事” 性別で役割分担、根深く

家庭で感じた性別に由来する生きづらさ(抜粋)

 パートタイムの仕事を終えて家に帰り「疲れた」と口にすると、夫から返ってきた言葉は「え、なんで?」。パートは疲れないと思っているのだろうか。

 普段から夫の帰宅時間に合わせて、夕食や風呂を用意するという佐世保市の40代女性。仕事を終えても待ち構えているのは家の“仕事”だ。「必ずしも女性が食事の支度や子どもの世話をしなければならないとは思っていない」。夫からはそう言われたこともあったが、夕食の準備ができていなければ「疲れて帰ってきたのに」。言葉の裏側に夫の潜在意識が見え隠れするような気がしてならない。

 女性の社会進出が進み、共働き世帯も増加している中、性差による生きづらさをテーマにした長崎新聞の双方向型報道窓口「ナガサキポスト」のアンケートでは、夫婦間の役割に関する“妻の嘆き”が多く見られた。

 「女性が担う労働が社会的に軽んじられている」。そう指摘するのは長崎大ダイバーシティ推進センターの矢内琴江准教授。具体例として▽女性が家事労働を無償で担う▽育児や介護など市場化されたケアワークも安い賃金で従事する-といった実態を挙げる。

 冒頭の「パートは疲れない」だけでなく「専業主婦は暇」といった発想に関しても、女性ジェンダーの役割への軽視を読み取る。「男性が表に立ち、女性はサポートする方が性に合っている」といった社会の固定観念が背景にあるとみる。

 「夕食の用意がないと夫が不機嫌になる」となれば、女性が仕事を辞めたり、昇進を諦めたりする場合も否めない。経済的自立を阻まれた女性は、男性によって一人の人間として生きていく機会を奪われる。「女性に対する人権侵害。私たちの社会はこれを容認してよいのだろうか」。矢内准教授はこう問いかける。

 回答で目立ったのが、親族の集まりでの疑問。「男性たちが飲み食いする中、料理やお酒の準備、片付けをするのはいつも女性」。矢内准教授は伝統的なジェンダー構造の中で「男性が無意識に特権的な役割を選び取り、女性も異を唱えなかったのではないか」と分析する。

 さらに「女性はこうあるべき」という考え方を他の女性や自身の子どもへの押しつけも考えられるという。「男女それぞれが自己批判的な視点や思考がなければ、社会は変わらない」。性差による役割分担への意識変化がこれからの社会に求められるだろう。

© 株式会社長崎新聞社