「あなた」と考える国際女性デー③ 【趣味・地域活動編】茶道は花嫁修業? 個性を尊重する社会に

性別に由来する生きづらさ(抜粋)

 「らしさ」や「女性は家庭に入る」-。性差による生きづらさをテーマに、長崎新聞の双方向型報道窓口「ナガサキポスト」で実施したアンケートでは、男女の固定観念を前提とした評価が趣味やプライベートの場面にも表れていた。

 「女らしくていいね」「花嫁修業?」-。茶道を約20年習っているという30代女性は周囲からこう言われ続け、「もともとは武士のたしなみだったのに」と「もやもや」を口にする。

 「『男なのに髪を伸ばしたり染めたりして』と言われた」「料理や調味料のCMは女性がメインで出ている」-。不快感を抱いた経験や気づきなどが、男女それぞれから寄せられた。長崎純心大の鈴木千鶴子客員教授はこれらを「男女のイメージでくくられ、個人として考慮されていない」と指摘する。

 固定観念の中には「男性は力が強い」などと体力面で理にかなった部分もある。男女を画一化することで社会制度や教育が効率的になり、役割意識が広く浸透。しかし、同性間でも程度の差があり「必ずしも全員に当てはまるわけではない」(鈴木客員教授)。

 決め付けや「らしさ」の押しつけは、時に発揮できたはずの力をつぶし、個々人のアイデンティティーを否定する可能性がある。鈴木客員教授によると、ジェンダー平等が進む国は、社会の豊かさや幸福度の指数が高い傾向にあるという。「『男』や『女』ではなく、個人の個性として考えや嗜好(しこう)を尊重することが『持続可能な良い社会』につながる」

 こうした性別を理由にした先入観に接した際の生きづらさとは何か。「九州男児」という言葉がある九州では、「亭主関白」「男尊女卑」の文化が根強いために感じる場面が多いとみられる。回答には「夫や男性を立てるべき」という環境で育った中での違和感や性別による役割分担意識の強さによる格差が見受けられた。

 中でも、地方ならではの地域活動で感じた違和感を指摘する意見が多かった。「公民館の掃除当番は全て婦人部が任されている」(長崎市の40代女性)。散らかすのは決まって「会議」という名の飲み会をする男性たち。変だと言ったら「村八分」のような扱いを受けたという。

 鈴木客員教授は「地方に代々受け継がれてきた男性優位の伝統やしきたりは変化しにくい」と分析。しかし、政治においては「ミュニシパリズム(地域主権主義)」という地域から世界を変えていこうとする動きがあり「ジェンダー問題も同じく市町から変えていくことが重要」と主張する。

 そのためにも、まずは問題の根本にある個人のジェンダーへの意識を見つめ直し、アップデートしていくことが急務だろう。

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