「あなた」と考える国際女性デー⑤(完) 【記者座談会】男女観は“伝統文化”? ともに生きやすい社会へ

回答について議論する国際女性デー取材班

 「国際女性デー」(3月8日)に合わせ、長崎新聞の双方向型情報窓口「ナガサキポスト」で、性別を理由にした先入観に接して「生きづらさ」を抱える人たちの声を募集した。寄せられたのは、無意識の偏見による否定的な言動をされた経験や自身の価値観への気づきなど。回答や専門家への取材を通して見えた現状、感じたことを担当記者が振り返った。
(国際女性デー取材班)

 -現状や解決策は

 A 募集開始後すぐに60代男性から「家庭崩壊運動だ。日本の伝統文化が嫌なら出て行け」と届き、驚いた。「これまで築いた価値観が否定されるように感じるのかな」と推測し、少し見方が変わった。ただ、多くの生きづらさを訴える声が届き、改めて伝える意義を強く感じた。

 B 家庭での役割によってキャリアを諦めた女性が複数いた。女性管理職の登用について、各企業は「いつまでに何人」と目標設定しているが、「男女問わず優秀な人を置けばよいのでは」という意見がある。専門家は「男性でも年齢や周囲との調整で管理職に就く人はいる」とした上で「ポジションを与え育てることも組織の役割。『喫煙室での会話』や、子育て中の女性が行きづらい『飲み会』で男女の評価に差が付くなら、それは組織の怠慢」と話していた。

 C 別の専門家は「性的少数者(LGBTQ+)への理解もそうだが、今の学生は多様性の中に生きている。社会側が若者の感性を大事にするべき」と言っていた。研ぎ澄まされた学生が企業の姿勢を判断する上でも、女性管理職登用の数字は重要になるのだろう。

 -これまで自身が感じた「生きづらさ」は

 D 大学時代、居酒屋でのアルバイト中に「女がいた方が盛り上がる」と宴会に呼ばれたことがある。社会人になり、別の会社の男性から私だけため口で話されるなど「女性だから失礼な態度なのかな」と感じることはある。

 A それは女性を見下げるマイクロアグレッション(小さな攻撃やけなし)。他にも「自炊する?」「結婚は?」「子どもは?」と聞いてくる人はたくさんいる。「生き方は多様でよいのでは」と疑問を抱く。

 B 記者としての悩みもある。本県の副知事など、女性が役職に就くと記事中に「女性」と書くが、本当に書くべきか、いつまで特筆すべきか考えてしまう。

 -企画を通して

 D ジェンダーの話は難しいと逃げてきたが、専門家から「完全な男女平等の達成はずっと先とされていて、現時点で正解はない。難しいのは当たり前だが、なぜ難しいのかを議論すべき」と言われ、はっとした。同僚とも語り合い、気づきも多く面白かった。話し合う大切さが分かった。

 C ジェンダーの問題がひとごとで、拒否感がある人が多いと実感した。「女性が生きづらさを唱えるもの」というイメージがあるのかな。「性別にかかわらず声に出していいんですよ!」と言いたい。

  =おわり=

© 株式会社長崎新聞社