後継者不足で注目される第三者への「事業承継」 人気の山菜・キノコ専門店(花巻市東和町)に異業種から担い手が つなぐ“支援センター”の存在も【トレンドいわて】

岩手県内でも増加傾向にある「事業承継」。花巻市では、人気の山菜やキノコの専門店が、第三者に事業を引き継ぐことになりました。

花巻市東和町の土沢商店街にある「きのこやおいよ」は、店主の及川忍さん(79)が2002年に始めた“山の幸専門店”です。

春はフキノトウやタラノメ、シドケなどの山菜。秋になるとマツタケをはじめとしたさまざまなキノコが店頭に並びます。

商品は及川さんが自ら山に入り採ってきたり、地域の人たちが持ち込んだものを買い取ったりしています。
品質の高い山菜やキノコに県外からの引き合いも多く、業績は順調でしたが・・・

(及川忍さん)
「体力が若干なり落ちてきている。体力というのは脳みその体力もしかりなんですよ。あんまり忙しいと目が回るけど、頭が回らないという状況が出てきたというのが、事業承継の始まりですね」

79歳の及川さんは、事業を第三者に引き継ぐことを決断しました。

新たに店を運営することになったのは、盛岡市の2WAY(ツーウェイ)という会社です。

(2WAY 佐藤陽一代表)
「“ばっけ”(=フキノトウ)の天ぷらはお酒と一緒によく頼んでましたね」

事業の引き継ぎ初日となったこの日、2WAY代表の佐藤陽一さんと役員の菅原郁弥さんの2人が店を訪れました。

(2WAY 佐藤陽一代表)
「私の祖先がここのエリアの出身でして、ここで旅館業を営んでいたので、自分にとってゆかりのある地なんだなという思いからここを引き継ごうと決めました」

事業の可能性と地域との縁を感じ、引き継ぐこと決めた佐藤さんですが、現在2WAYが主に行っている事業は、ペットホテルの運営です。

(佐藤代表)
「(キノコ採りや山菜採りって今までしたことは?)ないです。ないので教えてもらいながらやります」

キノコや山菜については素人ですが、法人向けの販促支援事業も手掛ける2WAYは通信販売のノウハウもあり、販路拡大が期待されます。

今回、両者をつないだのが岩手県事業承継・引継ぎ支援センターです。

(岩手県事業承継・引継ぎ支援センター 佐々木孝志 統括責任者)
「比較的短期間の中で、今回ご成約までたどり着いたということで、及川さんの期待に応えられてよかったかなというのが率直な感想」

2015年に盛岡商工会議所内にセンターが設置されて以降、相談件数は年々増加しています。
昨年度はおよそ300件の新規相談があり、42件が成約。いずれも過去最多で、後継者不足に悩む人が多いことがわかります。

業種別にみてもサービス業、小売業の割合がやや多いものの、建設業、宿泊業など幅広い業種で事業承継が行われました。

(佐々木孝志 統括責任者)
「いずれは事業承継というのは、どの企業であれ、事業者であれ、必ずやってくる。できるだけ早い時期に、まだまだお元気なうちに、あるいは企業も体力があるうちに、準備を進めるきっかけを築いていただいて、センターにご相談いただければ、より理想にかなった引き継ぎが進むのではないかと思う」

佐藤陽一代表は今後、「きのこやおいよ」の店舗の営業を続けながら、及川さんの知識や技術を学び、1年かけて事業を引き継いでいくことにしています。

(2WAY 佐藤陽一代表)
「例えばマツタケで言ったら丹波のマツタケというような、必ず何かのマツタケという名前があるが、こちらにはないので、しっかりこの土沢エリアと言う名前をつけることでブランディングもしていって、そうやって認知される活動もしていきたいと思っている」

(及川忍さん)
「安心というか一段落かなと。(2WAYは)いろんなことを勉強してるなと思うし、期待してますということですね」

人口減少や少子化によって地域で長年培われてきたビジネスモデルが失われつつある今、経験や知識を次世代につなぐ「事業承継」という新しい形が注目されています。

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