「やっぱり輪島が好き」 中村さん姉弟、加賀から戻りそろって入学式

そろって入学式の日を迎えた姉の中村莉愛さん(左)と蒼桜君=輪島市鳳至町

 能登半島地震で被災した輪島市や穴水町などの小中学校で8日、入学式が行われた。輪島では、加賀市に2次避難していた中学1年の姉と小学1年の弟がそろって故郷に戻り、学校生活をスタートさせた。地震直後は余震が続く輪島暮らしをためらっていた2人だが、家族や友人が残る地元への思いが募り「やっぱり輪島が好き」と帰郷を決断。きょうだいそろって新たな一歩を踏み出した。

 きょうだいは、輪島中に入学した中村莉愛(りあ)さん(12)と鳳至(ふげし)小に入った弟の蒼桜(あお)君(6)で、それぞれ輪島消防署で行われた入学式に出席した。市内の小中学校は避難所になっているため、消防署のホールが晴れ舞台となった。

 元日の地震後、2人は家族とともに輪島市内の避難所に身を寄せ、1月21日から約2カ月、加賀市山代温泉の旅館に2次避難した。いずれも激しい揺れへの恐怖から輪島に戻ることに後ろ向きだった。

 莉愛さんは「輪島の海とか自然が好きだから」と友人の多くが通う輪島中への進学を決めたが、地震の恐怖を鮮明に覚えていた蒼桜君は消極的だった。加賀市の避難先では当初、母・佳保梨(かおり)さん(41)から離れず、トイレも1人で行けなかったという。

 そんな中、3月下旬に輪島へ嫌々戻った蒼桜君だったが、しばらく自宅で過ごすうちに「この家が好き。輪島で暮らしてもいいよ」と話すようになった。

 真新しい制服を着た莉愛さんは「中学では友人と互いに励まし合い、勉強を頑張りたい」と笑顔。蒼桜君は「将来は大工になって、家族の家を建てたい」と夢を語った。

  ●消防署で6校入学式、小中とも新入生減少

 輪島市内の河井、鳳至、鵠巣(こうのす)、大屋、河原田、三井の6小学校は、入学式を3校ずつ2回に分けて輪島消防署で行った。6校は輪島中で1学期の授業を行い、2学期は河井小で建設中の仮設校舎に移る。門前東小では、門前西小との合同入学式が行われた。今後の授業も東小校舎で行う。

 輪島市内9小学校の新入生は69人で、地震前の見込みより約30人減った。輪島、東陽、門前の3中学校には、見込みより約40人少ない91人が入学した。

 8日は穴水町穴水小、向洋小、穴水中の3校でも入学式が行われ、児童生徒計65人の門出を祝った。

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