【声楽アンサンブル】誰もが憧れる大会に(4月9日)

 福島市で先月開かれた第17回声楽アンサンブルコンテスト全国大会で、郡山市の郡山一中が頂点に立った。郡山市の季[とき]の音[ね]が3位に入り、本県のレベルの高さを改めて示した。出演団体は増え、文部科学大臣賞が新設されるなど大会の存在意義は高まっている。合唱王国ふくしまの象徴として一層、充実させたい。

 郡山一中は混声合唱の名曲「水のいのち」を選曲し、荘厳な歌声で審査員や聴衆をうならせた。社会人や大学生で構成する季の音はブルックナーの3曲を歌い、洗練されたハーモニーを響かせた。県内から8団体が出演し、郡山高と郡山七中も入賞したのは誇らしい。

 郡山一中と季の音を指導した小針智意子さんにとって中学教員生活最後の舞台となった。郡山一中は16人のうち男子が5人という難しい編成だったが、「諦めず作品の本質に迫る信念」(菅野正美県合唱連盟理事長)でまとめ上げた。災害による中止を除く14回の声楽アンサンブルで、郡山二中、郡山五中を含めて在籍校を9度日本一に導いている。退職後も、指導や発表の場を通して合唱の魅力を県内外に伝え続けてほしい。

 1位の団体に贈られる文部科学大臣賞の新設は、小編成のアンサンブルで競う希有[けう]な全国大会が築いた実績への高い評価を意味する。運営する県や県合唱連盟などの関係者は栄誉と感じつつ、誰もが憧れる大会に向けては改善も必要と受け止めている。

 出演団体は公募と推薦で選ばれ、今回は第1回の33都道府県96団体から最多の42都府県129団体に増えた。ただ、公募は毎年100団体以上の申し込みがある中で、第1回と同じ16団体にとどまり、狭き門となっている。日程の関係で団体を増やすのは困難とはいえ、全都道府県の参加を得て切磋琢磨[せっさたくま]し、競い合うのが望ましい。選考の在り方は再考の余地がある。

 石川県のコマツHAPPYMELODYが小学校・ジュニア部門唯一の金賞に輝き、能登半島地震の被災地に朗報を届けた。東日本大震災を機に作られたテーマ曲「夜明けから日暮れまで」を、新型コロナ禍を経て5年ぶりに全員合唱した。本県を舞台とする大会は、苦難を乗り越える力を分かち合う場としても磨く価値はある。(渡部育夫)

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