野球と牛の世話の共通点、それは「目配り、気配り」…県立農業高校チームを初の県大会決勝に導いた監督が語る指導の極意

鹿屋農業高校野球部監督の今熊浩輔さん

■「かお」高校野球県大会で初の決勝進出を果たした県立鹿屋農業高校監督の今熊浩輔(いまぐま・こうすけ)さん

 鹿屋農業高校野球部を率いて10年目。6日まであった九州地区高校野球大会県予選で、創立129年の同校を県大会初の決勝に導いた。選手たちは持ち前の堅守と下位打線まで粘り強い攻撃力を発揮。「エースを中心に一致団結してくれた。鹿屋の人たちに元気を届けられた」

 普段は農業機械科の実習助手としてトラクターの使い方などを教えている。部員には農業科や畜産科の生徒もおり、牛の世話などで練習に来られないこともある。自身も同校畜産科の卒業生で、練習ができない悔しさはよく分かるという。

 高校時代はソフトボール部で野球経験はない。県立農業大学校卒業後、母校へ戻り3年目で監督となった。「野球を知らなかったから、当時はがむしゃらに勉強した」と振り返る。枕崎高校の小薗健一監督を頼り、片道2時間半かけて通った。戦術など野球の基礎を学び、A4判ノート10冊以上にまとめた。

 野球の指導では畜産科での経験から「目配りと気配り」の重要性を説く。牛は言葉を話さないため、日頃のささいな変化に気付く必要がある。「野球でも牛と同様に気持ちを考えることが大事。技術向上や人間性の成長にもつながる」

 帽子のつばの裏に「恩返し」「感謝」「有難う」と書いた。「ここまで来るのにいろいろな人にお世話になった」。大会前は鹿屋市の神社をはしごして感謝の気持ちを再確認する。同市下祓川町の野球部寮「農魂寮」に部員23人と暮らす44歳。

1失点で完投した鹿屋農のエース・吉元=鴨池市民

© 株式会社南日本新聞社