安中後閑小、年度末で閉校 1年生に苗木贈る伝統行事も62回で幕 群馬

60年以上続く伝統の苗木贈呈

 群馬県安中市後閑地区の住民有志でつくる「後閑の未来を考える会」(相川宇三郎会長)は8日、安中後閑小(大山政人校長)に入学した新1年生5人にミカンの苗木を贈った。60年以上前から続いてきた伝統行事だが、全校児童数36人の同校は本年度末の閉校が決まっており、今回が最後の苗木贈呈となった。

 新入学の児童に苗木を贈る行事は、元県職員の故清水辰吉さんが1962年、旧上後閑小に入学した長女の成長を願って自宅に植樹したことがきっかけ。翌63年から同小の新入学児童全員に苗木を贈り、同小が後閑小と統合した後も毎年続けてきた。

 清水さんは苗木の寄贈を60回続けた後、一昨年の5月に94歳で他界した。善意の取り組みを絶やすまいと、同会の相川会長が「継続は力なり。辰吉さんの長年の思いと地域の未来を担う子どもたちを大切にしたい」と清水さんの遺志を引き継ぎ、昨年から苗木の贈呈を担ってきた。

 贈呈式で、大山校長は「62回目となり、子どもたちにとって心の思い出になる苗木。大切に育ててください」と児童や保護者に向けてあいさつ。相川会長が「入学おめでとう」と一人一人に苗木を手渡し、受け取った中嶋唯斗君(6)は「ミカンが好きなので楽しみ」と喜びの表情を浮かべた。

 PTA会長の鈴木真樹人さん(40)は「5年生の息子が入学時に栗の木をもらった。栗は実を付け、家族でいただきました」と感謝の思いを新たにした。

 同校の校長室には現在、清水さんの家族から寄せられた手紙が飾られている。「うれしいこと、かなしいこと、ころぶことあっても、木のようにぐんぐん大きくなって夢に向かって育っていってくださいね」―。善意の込められた伝統は、児童をいつまでも見守り続ける。

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