現職警官が第三者に捜査情報漏らす 「まるでスパイ映画」「何を信じて相談すれば…」 県民に広がる不安「闇が深そう」 鹿児島県警

巡査長が捜査情報漏えい疑いで逮捕された鹿児島県警本部庁舎=8日、鹿児島市鴨池新町

 捜査情報を第三者に漏らした疑いで鹿児島県警の警察官が逮捕され一夜明けた9日、県民からは「被害に遭っても安心して相談できない」と不安の声が上がった。

 看護師を目指す鹿児島大学4年の女性(21)は、実習で個人情報保護の大切さを学んだばかり。事件を知り「告発や告訴をする人は警察を信頼して情報を寄せる。それが外に漏れるのは怖い」と話した。保険会社で個人情報を管理する立場にいたという鹿児島市照国町の女性(77)は「流出できる環境を放置していた組織の責任」と険しい表情で語った。

 「スパイ映画のよう。何が目的だったのだろう」と首をかしげるのは鹿児島市小川町の男性(86)。霧島市の自営業女性(46)も「内部告発か、外部に弱みを握られていたのか。闇が深そう」と動機が気になる様子だった。

 一部マスキングした捜査資料をウェブメディアが掲載したことが事件発覚のきっかけとなった。同記事では選挙違反や性犯罪の捜査情報など100事件超、約300人分の個人情報が流出したとしている。県警は加工されずに資料が流出した可能性が高いとみて捜査を進めていた。

 「口にするのもつらいことなのに、情報が流出するのであれば、被害に遭っても泣き寝入りするしかなくなる」。昨年、家族が性犯罪に巻き込まれた県内の女性は、通報したことが容疑者に伝わることを恐れる。「逮捕後の状況など身を守るために知りたい情報は教えてもらえない。誰のため、どこを向いて情報を扱っているのか」

 長年、県警と連携し天文館地区のパトロールなどに取り組む「天ちゃん会」の高田秋穂会長にとって、警察は同志のような存在だという。「信頼回復には時間がかかるだろう。かなりショック」と明かす。「命や財産が危機にさらされた時、最後に頼るのが警察。原因究明や再発防止を急ぎ、真の優しさと強さを備えた組織になるよう前に進んでほしい」

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