安中藩ゆかりの手裏剣 古武道愛好家8人が演武 群馬・安中市

根岸流手裏剣術を披露する早坂さん

 安中藩剣術指南役で手裏剣の名人、根岸松齢(1833―1897年)を追悼する奉納演武が9日、群馬県安中市内の根岸の石碑近くにある市文化センターで初めて開かれた。元警視庁署長ら県外の古武道愛好家8人が集まり、ゆかりの根岸流手裏剣術を披露した。

 奉納演武は、根岸流手裏剣術七代宗家の早坂義文さん(66)=茨城県龍ケ崎市=が根岸を顕彰しようと企画した。主宰する道場の門弟が同県のほか、都内や千葉県、神奈川県から駆けつけた。

 早坂さんと門弟たちは、1畳の畳を立てた標的に一礼した後、真剣な表情で日頃の鍛錬の成果を見せた。1.8~9メートルほど離れた位置から、長さ10センチほどの棒状の鉄製手裏剣を手元から次々と放った。根岸の石碑も訪ね、保存伝承に決意を新たにした。

 江戸時代、「上州の小天狗」と呼ばれ、剣術の達人だった根岸は、安中藩出身で水戸藩北辰一刀流剣術師範の海保帆平に師事した。そこで学んだ願立流手裏剣術を改良し、根岸流を開いた。

 早坂さんは警視庁の元警察官で、八丈島署長で退職した。柔道や空手のほか、職務に生かそうと現役時代から古武道の体得に励んできた。日本古武道協会正会員でもある。

 忍者道具の展示と体験施設「岩櫃真田忍者ミュージアム(にんぱく)」(東吾妻町)の相談役を務める縁で来県し、今回の奉納演武を計画した。昨年12月から構想を温め、同センターなど市側と調整し、実現させた。早坂さんは「貴重な根岸流手裏剣術を多くの人に知ってほしい」と話し、今後もさまざまな機会で発信したい考えだ。

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