ネット投票はまだ先? ハードル高すぎる「郵便投票」…指定施設以外の入院患者の思いは届かないのか

鹿児島市議選で不在者投票する市立病院の入院患者=10日、鹿児島市上荒田町

 「不在者投票を実施していない病院に入院中の知人がいる。どうにか投票できないの?」-。鹿児島市議選の選挙戦が続く中、病院や介護施設などに入院、入所する市民向けの不在者投票についての意見が南日本新聞に届いた。今年は7月に県知事選があり、総選挙も想定される“選挙イヤー”。投票したい人の気持ちに応える制度になっているのか気になる。

 市選挙管理委員会によると、不在者投票は、病院に入院中など投票に行きたくても行けない人向けの制度。10日に市立病院で実施されたような施設投票のほか、郵送でも投票できる。前回2020年の市議選では、市全域で1372件の不在者投票があった。

 ただ、施設投票できるのは、あらかじめ県選管に認められた「指定施設」に限られ、市内では4月1日現在で98施設。県選管によると、県内では427施設となっている。

 一方、郵便投票に関しては要件が厳しい。両下肢などに重い障害があり身体障害者手帳を持つ人や、「要介護5」の人となっている。

 質問のケースも「病院は指定を受けておらず、介護度5の条件には該当しない」。市選管の仮屋拓也事務局長は「要件緩和を望む声は市民から届いており、市区選管の全国組織から国に要望している」と話す。

 近年、車に投票箱などを積んだ「移動期日前投票所」を導入する自治体が県内でも増えている。これを活用し、指定施設以外の病院にも来てもらえないのか。実施する自治体では投票所の削減と合わせて導入するケースが多い。鹿児島市は156カ所の投票所を維持しており、移動投票所の運用は「考えていない」という。

 選挙は不正を防止し公正さを保つことが最優先。全国的には茨城県つくば市のように、移動が難しい人も投票しやすい「インターネット投票」に向けた取り組みも進む。車を使ったオンデマンド型移動期日前投票所や個人のスマートフォンなどによる投票などが想定されており、近い将来、より投票しやすい環境が整う可能性はありそうだ。

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