路線バス、ピンチ

 歌人の宮英子さんに駄じゃれを交えた一首がある。〈階段の昇りは膝に障(さや)りなし「ワタシクダラナイヒト」降(くだ)り難儀す〉。足が悪い私がつらいのは「上り」よりも「下り」なのよ。嘆きを「私くだらない人」と駄じゃれに紛らせて笑い飛ばしている▲人の足に限らず、近頃は“地域の足”までも弱っている。今月、長崎自動車(長崎市)は路線バスの16区間を廃止した。西肥自動車(佐世保市)は461便を減らし、この3年で便数の3割が減ったという▲運転手の不足に加え、労働時間の規制が強まった。路線、便数、停留所を減らす。最終便を繰り上げる。ほかに妙案が見当たらないらしい▲先日、長崎市南部にお住まいの磯部千穂子さんが本紙「声」欄に意見を寄せられていた。市中心部に向かう午前7時台のバスが2便から1便になったりと、不満や不安が増す。〈市の中心部ばかりが開発されて(中略)、周辺部は住むなといわんばかり〉で不便極まりないという▲人手不足にドライバーの「2024年問題」と“地域の足”は急な坂を下っている。利用者が困り果てて「仕方ない」と嘆くだけでは済まされない▲運転手をどう確保するか。使いやすい運行サービスはないか。〈降(くだ)り難儀す〉のこのピンチに行政も住民も加わり、知恵を寄せ合う時が来ている。(徹)

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