ネコが縄張りを主張する際の「スプレー尿」はなぜ臭い? 消臭剤への活用も期待される研究成果を岩手大学が発表

強烈な臭いが時に飼い主を困らせるネコの尿。その臭いの秘密に岩手大学の研究室が迫りました。

ネコは通常であれば地面に尿をしますが、自身の縄張りを示すため時折壁面に尿をかけることがあります。これを「スプレー尿」と言い通常の尿と比べ臭いが強いとされています。

岩手大学農学部の宮崎雅雄教授が、ガスクロマトグラフィーという装置で測ってるのはネコの尿の成分です。

通常、家の中で1匹で飼われているネコはスプレー尿をすることは少ないと言われていますが…

(岩手大学農学部 宮崎 雅雄 教授)
「ストレスとかを感じると(スプレー尿を)してしまうことがありますので、それが大きな問題」「飼い主さんが非常に悩ましい問題に苦しんでいるということになります」

ストレスがスプレー尿につながるといいます。

宮崎教授の研究室でも研究のため17匹のネコを飼育していて、尿の臭いは困りごとのひとつです。飼い主を悩ませるスプレー尿の臭い。宮崎教授はどんな成分が強い臭いをもたらすのか通常の尿との成分の違いを調べました。すると、通常の尿と化学的な成分に違いはないことが分かりました。

(岩手大学農学部 宮崎 雅雄 教授)
「尿そのものは同じなんですが提示の仕方。一つはより臭いが放出しやすいように壁などにスプレーして。排泄目的の時はむしろ自分の臭いが残らないように土などにしてさらに砂をかぶせて。臭いの放出のされ方が変わってくるということが今回分かった新しい結果になります」

臭いの違いは尿の成分ではなくその排出方法にあったのです。

採取したネコの尿を地面に排泄した場合と壁にかけた場合を再現し臭いを比較してみました。

(記者リポート)
「全然違う。こちら(壁にかけた)の方が臭いですね」

同じ尿なのに地面にするか壁にかけるかで臭いが変わる?理由はネコの尿の表面張力にありました。ネコの尿は壁面にかけるとダラダラと垂れて表面積が広がり臭いを発し続けます。一方、地面にした場合はあっという間に土に浸み込むため臭いを発する面積はごくわずかです。

(岩手大学農学部 博士課程 上野山 怜子 さん)
「研究室に飼っている雄ネコでよくスプレー尿するネコがいて臭いなと思っています」「これを成果としてまとめることができたらと思って実験を進めてきました」

研究室での困りごとが思わぬ成果につながった今回の研究。悪臭の元でもある「コーキシン」というタンパク質に、表面張力を下げて臭いを拡散させる働きがあることも分かり、今後、消臭剤の開発などで活用が期待されています。

© 株式会社アイビーシー岩手放送