【ウクライナ支援】復興への理解深めたい(4月12日)

 岸田文雄首相とバイデン大統領は、日米首脳会談でウクライナへの揺るぎない支援を確認した。ロシアへの厳しい制裁を続け、無条件で即時、完全に軍を撤退させるよう共同声明で要求した。毅然[きぜん]とした姿勢を国際社会に堅持するのは重要だ。しかし、ロシアは応じるべくもない。停戦への出口が見えないにもかかわらず、ウクライナはなぜ復興にも注力するのか。日本や本県の役割を含めて考えたい。

 ロシアの侵攻開始から2年を経て、ウクライナの苦境が伝えられている。反転攻勢は強固な防衛線に阻まれ、米国の軍事支援は陰りも見える。領土の防衛、奪還は正念場にあるとされる。

 過酷な情勢下、ウクライナの政府関係者は、本県をはじめ東日本大震災の被災地を幾度も訪れている。軍事侵攻で被害が出た都市や産業の復旧につなげる狙いがある。破壊された施設の復旧にいま着手したとして、再び標的にされれば水泡に帰しかねない。本来、復興に時間を割く余力はあるのかどうか。そんな危惧は浅はかだと、ウクライナのコルスンスキー駐日大使の発言で思い知らされた。

 数万人の国民、数百人の子どもが戦火の犠牲になっている。平和な生活を経験していない、覚えていない世代が既に出ている。数百万人が国外に逃れ、子どもたちが現地の社会になじみ、現地の言語を身に付ければ、家族を含めて二度と帰ってこなくなる。復興に10年もの期間はかけられない。復興をいま語るのは、平和が訪れた直後、復興へ迅速に動き出す覚悟を表すためだと、今月開かれた共同通信社論説研究会で強調した。

 戦時のウクライナと同列にはできないものの、復興を急ぐ事情は、震災と原発事故の未曽有の災禍から立ち上がる本県と重なる。切迫した苦悩は察するに余りある。

 コルスンスキー氏は自ら本県に何度も足を運び、原発の廃炉作業も視察した。関東大震災以降の災害史や戦後復興の取り組みも学び、ウクライナにとって日本は重要な経験を蓄積していると理解したという。ウクライナとは震災後、数々の支援を受けた結び付きがある。戦況を傍観せず、戦下の人々の辛苦に思いを寄せ、本県が注げる復興支援の在り方を模索し続けていく必要があるだろう。(五十嵐稔)

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