【いいな、いい電。飯坂線100周年】(下) 次の100年へ魅力向上 レトロ車両でファン獲得

100周年に向けて準備が進むレトロデザイン列車。左奥は現車両=11日午後4時ごろ

 市民や観光客らの足として欠かせない福島市の福島交通飯坂線。鉄路を「次の100年」につなげていくには、乗客アップにつながる取り組みや新たなファン獲得が欠かせない。鉄道部長の三浦賢一さん(54)は「魅力的で、利用者から選ばれる交通機関であり続けたい」と決意する。

 少子化やコロナ禍などで減少傾向にある乗客数は、沿線にある福島北高が2027(令和9)年4月に福島西高と統合され、将来的には利用者の減少が想定される。ただ、減っている乗客を一気に増やす方法を見いだすのは難しい。

 同社は、利用者に寄り添った運行を心がけている。他の鉄道会社の特に地方路線では、運転手一人で車掌が乗務しない「ワンマン運転」が多いが、飯坂線は車掌と運転士とペアにしている。高齢者らの利用も多いことから、乗り降りのサポートに加え、ドアに挟まれる事故を防ぐことなどが狙いだ。飯坂線には、遮断機や警報器のない「第4種踏切」が25カ所あり、電車と車が衝突する事故が度々、発生している。同社は3月までに、沿線の4カ所にカーブミラー、12カ所に看板を新設した。三浦さんは「安全安心な環境整備に取り組む」と誓う。

 鉄道に親しんでもらう取り組みも強化している。2022年に改装した曽根田駅構内に、旧車両の内装を改修した休憩所とワークスペースを兼ねた「お休み処ナナセン」を整備した。鉄道ファンに人気の車両7000系を使用しており、連日多くのファンが訪れる。貸し切り電車の運行にも力を入れている。13日は開業100周年を記念し、昭和から平成にかけて運行した車両にラッピングしたレトロデザイン列車を運行する。

 車掌の佐藤響希さん(21)=福島市出身=は、幼い頃から飯坂線を愛し、イベントがあれば積極的に参加した。中学生の頃には、駅員らとはほぼ顔見知りだったという。「自分のようないい電ファンが増えるよう、若い世代に魅力を発信したい」と意気込む。

 地域との連携・協力も重要だ。飯坂温泉街を巡る「ほろ酔いウォーク」が開かれている。飯坂温泉駅前をスタート・ゴールに温泉街の居酒屋、スナックなどでセットメニューを味わう事業。電車で訪れる参加者も多い。実行委員長の佐藤吉昭さん(82)は「これからも電車利用が増えるようなイベントを企画したい」と連携強化を誓う。

飯坂線のファンを増やしたいと願う佐藤さん

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