3児のシングルマザーが看護学生に 祖母の闘病が契機 「自分も寄り添いたい」 長崎・諫早

初めての授業で、脈の測り方を学ぶ上野さん=諫早市、長崎県央看護学校

 長崎県諫早市の上野由香さん(34)は、祖母の闘病を支えてくれた訪問看護師の働きぶりに心を打たれ、看護の道を志した。「人生最後の日までその人らしい生活が出来るよう、自分も患者やその家族に寄り添える看護師になりたい」との思いを胸に、この春、諫早市永昌町の長崎県央看護学校の門をくぐった。
 約4年前、白血病の祖母を自宅でみとった。当時は新型コロナウイルス流行の最中。入院すれば家族との面会はほぼ不可能になる。祖母、家族共に病院ではなく、住み慣れた自宅での治療を希望した。
 闘病生活は約1年間続いた。酸素吸入や症状緩和のケアなど、訪問看護師が細かくサポートしてくれた。祖母のケアだけでなく、たわいのない話をしたり、家族が無理していないか気遣ったり。温かな心配りもうれしかった。
 「おかげで祖母と一緒に家族で楽しい時間を過ごすことができた」。看護師の仕事ぶりに触れるうちに「こんな仕事も良いな」と思うようになった。
 中学生と小学生の3人の子どもを育てるシングルマザー。看護学校の学費に充てようと貯蓄に力を入れた。「学び直し」は大変だったが、当時勤務していた保険会社の昼休みや、子どもたちを寝かしつけた後のわずかな時間も惜しんで勉強した。
 日曜日には家族で図書館へ。子どもたちも一緒に勉強して応援してくれた。看護学校の試験科目には国語(現代文)がある。「スマートフォンが普及して文字を書く機会が減っている。漢字の勉強が一番大変だった」と笑う。
 約2年間の努力が実り、今春新設された看護科(看護師3年課程)の1期生となった。授業は9日に開始。「スタートラインに立てたワクワク感と同時に、医療に携わる責任の大きさを感じた。一日一日を大切に、しっかり学んでいきたい」と意欲を見せる。
 「学んだ知識で人を支える事ができるようになる。常に学ぶ事を忘れず、自分に何が出来るか考えられる看護師になりたい」。新たな挑戦が始まった。

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