「砂像は最後に跡形もなく消えるけど、砂像を通じてつながった絆はなくならない」…砂像彫刻国内初の女性プロは言う。「砂は環境にやさしい地産地消のアート」

砂像彫刻家の松木由子さん

■「かお」「吹上浜砂の祭典」に出展する国内初の女性プロ砂像彫刻家の松木由子(まつぎ・よしこ)さん

 ビッグベンやエリザベス女王など英国をテーマにした砂像を彫り進め、いち早く完成させた。鹿児島県南さつま市で5月3〜5日に開かれる「吹上浜砂の祭典」の招待作家。高知県黒潮町からほぼ毎年訪れる国内初の女性プロ砂像彫刻家だ。

 今期は雨が多く雨雲レーダーを確認しながらの制作。「建物を彫るのは初めてで四苦八苦したものの、集中できた。砂は繰り返し使われ環境にも優しい『地産地消』のアート。多くの人の記憶に残れば」と期待する。

 「吹上浜砂の祭典で人生が変わった」と語る。高知大学教育学部を卒業し、東京芸術大学大学院で金属工芸を専攻した。転機は高校の美術講師を務めていた2008年。地元の砂像連盟にかり出されて訪れた南さつまで海外のプロや市民らが作る大型作品と出合った。「自分一人で彫ってみたい」と魅了され、のめり込んだ。13年には砂像作りを仕事とするプロとなった。

 フィンランドで昨年7月にあった「第1回エノンコスキ砂像彫刻国際大会」では高知の「よさこい鳴子踊り」を表し優勝。「祭りや踊りは平和でないとできない。ウクライナ侵攻を続けるロシアと国境を接する国で平和への祈りを込めた」と話す。

 「砂は世界中どこも異なり同じものはない。南さつまの砂は硬くて質がよく大きな作品作りに最適」と評価する。「最後は跡形もなく消えるが、砂像を通じてつながった人との絆はなくならない。それが私の財産。楽しくてしようがない」。国内外を飛び回る52歳。

〈関連〉雨よけのビニール内でエリザベス女王やビッグベンを彫る彫刻家=南さつま市役所

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