災害の教訓後世に 震災の巨大余震から13年 福島県いわき市の田人地域振興協議会が伝承事業 小中生らに体験語る

小中学生に地震時の様子を語る大竹さん(中央奥)

 東日本大震災の巨大余震として、福島県いわき市南西部を震源とし推定マグニチュード(M)7.0、震度6弱を記録した地震から13年を迎えた11日、市内の田人地域振興協議会は地元の小中学生や住民に当時の状況や教訓を語り継ぐ伝承事業を繰り広げた。

 同協議会は2013(平成25)年から毎年、余震を引き起こしたとされる井戸沢(塩ノ平)断層沿いや、住民ら4人が犠牲となった土砂崩れ現場にイチョウの苗木を植えてきた。植樹は昨年までを一段落として終了し、復興が進んだ中、地震後に生まれた地元の子どもらに教訓などを語り継ごうと初めて開いた。

 協議会員の大竹保男さん(75)、斉藤富士代さん(79)、下山田誠さん(54)が田人小・中を訪れ、小学3~6年生23人と中学生22人にスライド写真などを交えながら地震発生時の様子を語った。

 土砂崩れが起きた石住地区在住の大竹さんは、激しい雨と雷の中、地震で停電し集会所に避難した経験を「この時ほど山が恐ろしいと思ったことはない」と話した。断層ができた塩ノ平地区に住む斉藤さんは、地震の翌日に自分の家からわずか150メートルほどの場所に断層ができているのを発見した時の驚きなどを語った。大竹さんが進行役を務めた。

 話を聞き、6年生の荒川晃匡さん(11)は「被害が大きくてびっくりした。自宅も山に囲まれているので備えが必要だと感じた」と話し、中学3年で生徒会長の中村真優さん(14)は「(災害の記憶を)風化させないため、生徒会サミットで発信したり、防災や復興のボランティアに参加したりしたい」と感想を述べた。

 田人ふれあい館では地元住民ら約30人が斉藤さんの話に聞き入った。また、いわき震災伝承みらい館で3月に展示した、復興や追悼の思いなどが記された黄色いハンカチや地震発当時の新聞記事などが展示され、参加者は「4.11」に理解を深めた。地震が発生した午後5時16分に全員で黙とうし、犠牲者の冥福を祈った。

(いわき版)

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