スプリット、スイーパーはいまだ被安打ゼロも奪三振率は極端な低水準...ドジャース戦で「真価」が問われる松井裕樹<SLUGGER>

夢舞台のメジャーリーグでも松井裕樹(パドレス)が躍動を続けている。開幕戦でのデビュー登板ではピッチクロック違反の場面もあったが、これまでリーグ最多の8登板で失点は1試合のみ。まずは順調に滑り出し、チームは4月12日から地区ライバルでもあるドジャースとの3連戦を控える。

ドジャース打線は開幕から球団史上最長の10試合連続5得点以上を記録するなど絶好調で、81得点はMLB最多を誇る。1~3番に座る“MV3”トリオのムーキー・ベッツ、大谷翔平、フレディ・フリーマンはいずれも打率.333以上。その後ろを打つウィル・スミスとテオスカー・ヘルナンデスも絶好調で、パドレスのマイク・シルト監督は絶好調の松井をこの上位打線にぶつける継投を考えているはずだ。この強力打線をどう抑えるか、松井にとっては真価の問われるシリーズとなる。

ここまでの松井は、投球割合34.0%のスプリッター、19.1%のスライダー(スタットキャストの分類ではスイーパー)がいずれも被打率.000と絶大な威力を発揮している。曲がりの大きいスライダーは日本で投げていたものとは別のもので、メジャー平均と比較しても変化量はかなり大きい。早くも適応能力の高さを証明した形だ。 一方、今後へ向けては不安材料もある。日本時代は猛威を振るい続けた4シームが被打率.385と打ち込まれているのだ。3月21日の登板では、この4シームでフリーマンとスミスに連続安打を献上している。まだ長打は1本も許していないとはいえ、空振りをほとんど奪えていないのも気がかり。9イニングあたりの奪三振数も2.45とかなり低い水準にとどまっている。

ただ、その豪快な投げっぷりとは裏腹に、松井は楽天時代から毎年のように自身の投球に微妙なさじ加減を加え続けていた。同じ変化球でも球速や曲がり方を変化させ、配球のパターンも変え、そうした工夫を史上最年少での通算200セーブに結びつけた。

“MV3”を筆頭とするドジャース強力打線を封じることができれば、ベンチからの信頼度もさらに増すはず。小柄なレフティの快進撃がどこまで続くか注目だ。

文●藤原彬

著者プロフィール
ふじわら・あきら/1984年生まれ。『SLUGGER』編集部に2014年から3年在籍し、現在はユーティリティとして編集・執筆・校正に携わる。X(旧ツイッター)IDは@Struggler_AKIRA。

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