今、全国で書店の閉店が相次ぎ、その数は年々減少の一途をたどっています。
島根県では先日、大田市唯一の書店が閉店、地域の人から悲しみの声が広がっています。書店を取り巻く環境、そして生き残るためにはどうすればいいのか、取材しました。
島根県大田市にある『ブックセンタージャスト』。
1987年にオープンし、2000年12月に今の場所に移転。これまで地域の人たちに愛されてきた、大田市唯一の書店です。
しかし…
客
「孫の本を買いに来ました、最後に。やっぱり残念ですね、とっても残念です」
じつは、取材したこの日、3月31日が最後の営業日だったのです。
日曜の夕方、通常ならお客さんの少ない時間帯ですが、最終日は本を求めて絶えることなく人がやってきます。
客
「この本屋さんがなくなるのは悲しい」
「3日に1回くらいは必ず来てました。不便になるし、さみしいね」
石見銀山が舞台となった直木賞作品「しろがねの葉」の作者・千早茜さんも、SNSで…
「舞台である石見銀山がある町の唯一の本屋さんでした。たくさん売ってくれてひろめてくれただけでなく、なんと売り切り!泣きそうになりました。ほんとうにありがとうございました。」
閉店を惜しむ多くの声。
しかし、こうした声に反して、今、「まちの本屋さん」は全国で次々と姿を消しています。
全国の書店数の推移を見てみると、2003年に2万店以上あった書店の数は、約20年で1万1100店あまりに。半数近くに落ち込んでいます。
背景にあるのは、スマホ1つで完結するネット通販の拡大や電子書籍の普及。
これによって書店の売り上げは減少し、営業を断念せざるを得ない状況となっているのです。
午後8時前。
営業最終日のブックセンタージャストは、閉店時間ギリギリまでお客さんが途絶えません。
客
「さみしくなりますね」
「ほんとにさみしくなります」
「なんか実感します」
そして、多くの人に見守られるなか、ブックセンタージャストはその歴史に幕を下ろしました。
この閉店によって、大田市内からはすべての書店が姿を消すこととなりました。
客
「切ないというか、幼稚園のころから通ってた場所だったんで…やっぱりさみしいですね。
時代の流れというのもあると思うんですけど、今一度こういう文化とかは大事にしていきたいと、こういう瞬間になって初めて思いますね」
厳しい環境下で、書店はどうすれば生き残ることができるのか。
じつは、20年以上前から取り組みを続けている個人書店が松江市にあります。
訪れたのは、松江市のアルトスブックストア。
本だけでなく、靴やディフューザーなどの雑貨も多く並んだおしゃれな空間が広がっています。
アルトスブックストア 西村史之さん
「現状としては本だけで商売っていうのは、非常に難しい状況だと思います」
店主の西村さん。
夫婦2人で店を経営しています。
もともと西村さんの父親が長らく営んでいた個人書店で、その頃はいたって普通の本屋だったといいますが…
アルトスブックストア 西村史之さん
「20年前にコンビニエンスストアの台頭があって、品ぞろえが全て町の本屋の日銭を稼ぐラインナップと丸被りするわけですね。それが24時間営業で販売されると、20年前のスタイルでは続けていくことができないと感じて、リニューアルを決断しました」
書店の大型化が進み個人書店の閉店が相次ぐ中、山陰にもコンビニが台頭してきたことを受け、いち早く店のスタイルを一新しました
アルトスブックストア西 村史之さん
「初めてのことだったので何から手を付けていいか正直分からなかったんですけど、自分たちが好きだった音楽だったり、海外の文具だったりそういったものから少しずつ始めて。」
雑貨などの仕入れは、すべて西村さんのチョイス。
本の仕入れも、取次店に任せている書店が多い中、西村さんが全て選書していて国内で珍しいものも扱っています。
そして、リニューアルとともにもう1つ西村さんが始めたことが…
アルトスブックストア 西村史之さん
「工芸作家さんの展示販売会だったり、あとはお客様を招いてのトークイベント、ライブイベント等を毎月やっています」
去年1年間のイベント数は20回以上。この日も有名な木工作家のポップアップイベントの準備をしていました。
アルトスブックストア 西村史之さん
「本も奥深いですけど、自分たちがやりたい、続けていければいいなっていう商売のやり方が、こういうのですね」
当時、こうした書店は地方にはほとんどなく、アルトスブックストアは書店の新たなスタイルとして評価され、全国区で有名な『世界の夢の本屋さん』にも選出されました。
コンビニに、スマホ。
時代の流れに伴い苦境に立たされる書店。
これから生き残っていくためにはどうすればいいのでしょうか。
アルトスブックストア 西村史之さん
「お客さんって当たり前ですけど24時間それぞれお持ちでその中でスマホにとられる時間ってものすごく多いと思うんですよ。
その中で本を手に取ってくださる時間、本屋に足を運んでもらう時間はなかなか作っていただけない。
作っていただく後押しを、背中を押すきっかけを、どう本屋が作っていくことができるかで、これから生き残れるか、生き残れないかにかかってくるのではないかなと思います」
書店を取り巻く環境は目まぐるしく変わるなか、国も本格的に支援に乗り出します。
経済産業省は、3月、地域の書店の振興に向けたプロジェクトチームを立ち上げました。
今後、書店へのヒアリングや、キャッシュレス決済などデジタル化の推進など、書店の存続に力を注いでいくとしています。
地域にとって大切な文化の拠点をどう守っていくのか、今一度書店の在り方について考える必要がありそうです。