福島の若年女性の不安感(4月14日)

 「この子をおなかに授かった時、福島で子育てできるのかと、とても不安だった。しかし今、その子が幼稚園卒園を迎え、本当に良く成長してくれたと感謝しています」と涙ながらに、卒園児の保護者を代表して謝辞を述べてくださるお母様の言葉に胸が熱くなった。3.11以降、私たちは様々な不安を抱えていたが、今、新たな気づきを与えられた。

 本来なら大きな喜びであるはずの授かった我が子を、自分が生まれ育った福島で育てていくことに不安を持つのは二重苦だ。自分のふるさとで喜んで命を受け入れられない苦しみ、大切な我が子にもしものことがあったら、どうしようかという苦しみ。その二重苦を抱えつつ福島で子育てすることを選択され、福島に住み続けてくださり、けっして独りではなかった子育ての営みに、多くの感謝を述べられる姿に、福島で生きる若い保護者たちの決意とその勇気に感服した。また震災後に生まれた子どもたちが受けた教育の力によって、保護者自身が親として成長していくことを実感させられた。

 昨年12月のこの紙面で、女性と若者が福島県から東京圏へ流出する現状を嘆いた。若年層(15~24歳)の福島県外流出は全都道府県ではワースト2位だ。特に、福島県の女性の転出超過は、若年層では全国ワースト1位で、全年齢層でもワースト2位だ。

 地方から東京圏への人口移動が止まらないのは地方における雇用や所得の問題と捉え、地方経済の活性化に重点が置かれる。しかし女性に限って分析すると、ファクターXとして「人間関係の閉鎖性」「親や親戚の干渉」、職場や家庭、地域での「ジェンダーバイアスの強さ」がある。さらに、今回、気づかされたのは、福島の若年女性たちの不安感だ。

 2022年12月3日に東京で開催された政府主催の国際女性会議WAWにおいて、桜の聖母短期大学キャリア教養学科2年の学生会長がパネリストとして登壇した。この会議は、日本政府の最重要課題の一つであるジェンダー平等と女性のエンパワーメントを国内外で実現するための取り組みの一環として2014年から開催している国際会議であり、6回目の開催だ。

 学生は自分のスピーチの順番が来ると、スッと立ち上がり「みなさんにお願いが一つあります。私をじっくり見てください。私は『かわいそうな人』や『哀れな女子』に見えますか」と投げかけた。小学校2年生で3.11を経験した彼女は、募金活動をしている途中に「福島の女性はかわいそうね。もうお嫁にいけないね」と、被ばくした若い女性への偏見・差別の経験談を話した。そのうえで、短大の授業「福島学」×SDGsの学びの特徴を踏まえて、女性への偏見をなくすことも「防災」の一つであることを強調した。

 学校は若年人口のダムであり、教育は人を育て、社会の偏見をなくしていく力があることを確信している。

(西内みなみ 学校法人コングレガシオン・ド・ノートルダム理事長)

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