上田綺世に似た雰囲気。向上心の塊のようなFW内野航太郎のギラギラ感「自分がオリンピックに連れて行く」【U-23代表】

186センチの上背を活かし、ゴール前では圧倒的な迫力を示す。競ってよし、打ってよし、合わせてよし。その実力に疑いの余地はない。

だが、直前の活動に参加していなかった点を踏まえると、パリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップのメンバー発表で最もサプライズ要素が強かった選出だろう。

当の本人、内野航太郎も驚きを隠せなかったという。

「選ばれたというのを最初に聞いた時はびっくりしました」

筑波大の2年FWは横浜F・マリノスのユース育ちで、高校3年次にはU-18高円宮杯プレミアリーグEASTで21得点をマークして得点王に輝いた。惜しくもトップチーム昇格は見送られたが、筑波大では1年次から13試合で9ゴールを奪う大活躍を見せた。

得点パターンは豊富で、ボックス内の強さは圧倒的。同年代や大学では右に出る者はいない。昨年5月のU-20ワールドカップではメンバーから漏れたが、同10月のアジア競技大会では、大学生やJリーグで出場機会が限られていた面々で構成された大岩ジャパンに初選出された。

決勝の韓国戦(1-2)で先制点を挙げるなど、大会通算4得点をマークし序列がアップ。大会直後のアメリカ遠征では、フルメンバーが揃うパリ五輪世代のチームに、追加招集だが初めて名を連ねた。初戦のメキシコ戦でゴールを挙げるなどアピールに成功した。

パリ五輪やアジア最終予選への出場も現実的な目標として捉えられるようになった。だが――。

U-23アジア杯前最後の代表活動となった3月の国内2連戦では選外に。「本当は3月半ばのマリ戦とウクライナ戦のメンバーに入るために、(アピールのチャンスとして)デンソーカップに標準を合わせていた。でも、選ばれなかったので、これは結構厳しいと思っていた」という言葉からも落胆の色がうかがえた。

誰もがアジア最終予選での代表入りの可能性は潰えたかに思えた。それでも内野は諦めず、今の自分にできることをコツコツと積み上げてきた。デンソーカップでは中村憲剛コーチからポストプレーについてアドバイスを求め、大学に戻ってからもその教えを自分のものにするべく努力を重ねたという。

「得点を取るところだけではなく、ゴールが奪えない時に自分がどうやって価値を示していくのかというのを試行錯誤していた。そのひとつとして教わり、トラップをする際にスピードを出し過ぎるとずれてしまうので、減速してから収めた方がいいという助言をもらったんです。(ボールを受ける際に)落ちる距離や落ちる際のスピードを意識したら、かなりやりやすくなった」

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貪欲な向上心は昔から変わらない。どんな時でも腐らず、前向きに取り組めるのが内野の武器。横浜ユース時代もそうだった。周りの選手がトップの練習試合に借り出されても動じない。自分だけ同年代の試合に出場することになっても愚痴をこぼさず、ひたむきな姿勢でトライを続けていた。

そうした愚直な姿勢は、法政大から鹿島を経て、日本を代表するストライカーに成り上がった上田綺世(フェイエノールト)に通ずるものがある。雰囲気はもちろん、プレー面でもゴールを何がなんでも奪うというスタンスも含めてだ。

今回のアジア最終予選はグループステージを経て、一発勝負のノックアウトステージが控えている。準々決勝を勝ち上がり、そこから3位以内に入らないとパリ五輪にストレートインできない(4位の場合はアフリカ4位のギニアとのプレーオフに回る)。

ゴールが欲しい場面は必ずあるし、ビハインドをひっくり返さないといけないシチュエーションも想定される。だからこそ、必要になるのが内野の得点力だ。

「選ばれたからには、自分がオリンピックに連れて行く、その気持ちでピッチに立つ。年齢も関係ないし、立場も関係なく自分が引っ張って行く気持ちで戦いたい」

13日の練習後に意気込みを語ったゴールゲッターに迷いはない。「めっちゃギラギラしてるんで」。そんな言葉を残した内野からは闘志が溢れている。厳しいアジアの戦いを制すうえで、必ずこの男の力が必要になるはずだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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