【入湯税増額検討】温泉地再生の事例に(4月16日)

 会津若松市は入湯税を引き上げる市税条例の改正を検討している。増額分を市内の東山、芦ノ牧両温泉に放置された旅館・ホテルの解体や景観形成の財源に充てたい考えだ。廃旅館・ホテルへの対応は県内の温泉地が抱える共通の課題でもある。温泉地再生の先行事例として注目したい。

 入湯税の引き上げをめぐっては、東山、芦ノ牧の両温泉観光協会が連名で市議会に陳情書を提出し、採択された。陳情では、温泉街での魅力的なまちづくりを官民一体で実現するための財源として入湯税を引き上げるとともに、増額分を温泉地整備に限定して活用するよう求めている。

 東山、芦ノ牧両温泉には残存する旅館・ホテルが少なくとも6施設ある。30年以上が経過した施設では窓ガラスの割れや外壁の傷みが目立つ。東山温泉街では先日、空き家に熊が侵入して居座る事案も発生している。住民の安全確保と観光振興を図る上で温泉地の整備は急務と言える。

 市と、東山、芦ノ牧両温泉観光協会でつくる市温泉地域活性化検討会は昨年2月、アクションプランを策定し、景観を損ね、倒壊の危険性が高まっている施設を2027年以降に解体させる工程を掲げた。ただ、解体・撤去には数億円規模の費用が見込まれる。「絵に描いた餅」に終わらせないためには、財源の確保が欠かせない。

 入湯税収は1992(平成4)年度の1億9千470万円をピークに減少傾向にある。2019年度は1億596万円に落ち込んでいる。市は一般財源に組み込み、市全体の観光振興などに充ててきたが、減少が続く中で、将来的には予算のやりくりに影響が出る可能性もある。税収維持と観光振興の好循環を生み出すには、温泉地の魅力を高め、誘客を図る必要がある。引き上げの議論を契機に、従来の入湯税が有効に使われているか改めて精査すべきだろう。

 東山、芦ノ牧両温泉観光協会が今年1月から2月にかけて宿泊客を対象に実施した入湯税引き上げに関するアンケートでは、「使途が明確であれば協力したい」との回答が9割を超えた。一般宿泊客の入湯税を150円から250円に引き上げた北海道釧路市などの事例や温泉関係者の意見など踏まえ、妥当な額を探ってほしい。(紺野正人)

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