井上さんと数々の思い出 川西・吉里吉里忌で小曽根さん、神野さんが語る

井上ひさしさんとのエピソードなどを披露する小曽根真さん(左)と神野三鈴さん=川西町フレンドリープラザ

 川西町出身の作家・劇作家井上ひさしさん(1934~2010年)をしのぶ文学忌「吉里吉里忌」が14日、町フレンドリープラザで開かれた。井上さんと親交のあったジャズピアニスト小曽根真さん、俳優神野三鈴さん夫妻が故人とのエピソードを披露し、来場者約550人が在りし日の姿に思いをはせた。

 小曽根さんは、2003年に本県で開催された国民文化祭に合わせ、プロデュースを担当した井上さんの要請でピアノ協奏曲「もがみ」を作曲した。オーケストラ向けの作曲経験がなかった小曽根さんはいったん断ったものの、井上さんに「まだ3年あるからできますよ」と粘られ、引き受けた経緯を説明。今年11月にはドイツで小曽根さんとベルリン放送交響楽団が「もがみ」を演奏することも紹介した。

 神野さんは数々の井上作品に出演した。井上さんと電車に乗っていた際、小説好きの男性から「なぜ芝居を書くようになったのか」と質問された時の思い出を話した。井上さんは「芝居は、劇場に訪れた人たちが運命共同体となって、登場人物の人生などを見る特別な経験なんです」と応じたという。

 このほか、夫妻によるピアノ演奏・朗読が披露され、井上さんの代表作「ひょっこりひょうたん島」の主題歌を来場者で歌う一幕もあった。

 井上さんの生誕90周年、同プラザの開館30周年の節目に当たる今年、吉里吉里忌は10回目を迎えた。同プラザ内の遅筆堂文庫に神奈川県鎌倉市の井上さんの自宅書斎が再現され、13日から一般公開されている。

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