詩人・劇作家の寺山修司(1935~83年)や、寺山が嫉妬するほどの文学的才能で知られた俳人の京武久美(きょうぶ・ひさよし)さん(1936~2023年)と中学、高校で同級生だった青森市の大柳マルさん(88)=旧姓・赤田=が16日、中学卒業時に寺山や京武さんからもらった直筆のサインなど中高時代の資料13点を同市の県近代文学館に寄贈した。寺山の研究者らは「貴重な資料」と評価し、2人に関する研究の深まりに期待している。
大柳さんと2人は青森市の野脇中(現青森南中)、青森高の出身。大柳さんは中高時代の思い出が詰まった資料をトランクに入れたまま、70年以上大切に保管していた。今年1月、京武さんの死を東奥日報の記事で知り、寺山を長年研究している青森大学の久慈きみ代名誉教授に「しかるべきところに寄贈したい」と相談したところ、保管設備の整った県近代文学館に資料を引き渡すことを決めた。
16日は、同市の県立図書館で贈呈式が行われ、大柳さんが県近代文学館の館長を兼ねる仁和由紀人県立図書館館長に資料を贈呈。資料の中には寺山と京武さんが編集した野脇中の学級文芸雑誌「黎明」「はまべ」も含まれており、同席した久慈名誉教授は「すごく貴重な資料。次の世代の寺山研究に役立つし、新たな視点から、人物像に対する理解を深められるのでは」と期待した。
大柳さんは「寺山君と京武君はしょっちゅうじゃれ合っていて、(背が高かった)寺山君がいつも京武君を抱きかかえるように教室に入ってきていた」と中学時代のエピソードを披露。資料については「しまっておいたというだけの話。これという希望があるわけではないが、何かのお役に立てば」と控えめに語った。
県近代文学館によると、寺山や京武さんの中高時代の資料は少なく、大柳さんの寄贈資料も大半が初の収蔵。同文学館は5月24日から開く京武さんの追悼展で早速サインなどを展示する予定で、仁和館長は「研究者にとって第一級の資料だが、県民に文学を理解してもらう一助にもしていきたい」と述べた。