【早出し】文化財の内部、立体的に観察 芸工大の研究センター、エックス線CT撮影装置を導入

東北芸術工科大文化財保存修復研究センターが導入したエックス線CT撮影装置=山形市・同大

 山形市の東北芸術工科大文化財保存修復研究センターは、文化財の内部を立体的に観察できるエックス線CT撮影装置を導入し、16日、報道機関に公開した。同大によると、芸術系大学での導入は国内初。修復中の善宝寺(鶴岡市)の五百羅漢像に使用し、技法に関する新知見を得たという。同大は、地域のさまざまな文化財の調査など幅広い活用につなげたい考えだ。

 装置は京都大などに納入実績がある「Voxel Works(ボクセル・ワークス)」(東京)製。エックス線検出器を上下左右に動かし、対象を載せた台座を360度回転させて3次元データを得る。対象は高さ1メートル、縦横は各60センチまで対応できる。3次元データは総画素数で8Kテレビの数千倍の高画質になるという。同大は2次元画像を得るエックス線撮影装置を所有しており、新装置に更新した。費用は8217万円で、文部科学省の補助金で半分を賄った。

 同センターは五百羅漢像531体の修復に取り組んでおり、2023年度までに144体が完了した。従来装置による解析などで、像は複数の部材を組み合わせた「寄木造(よせぎづくり)」で、各像の頭部に「錐点(きりてん)」という穴が複数あることが分かっていた。新装置の立体データから各像の錐点の詳細位置などが判明したという。同センターの笹岡直美准教授は「多数の仏像を短期間に製作するため頭部を作る際の基準点にしたとみられる」と話す。耳や鼻などに細かい部材が使われたことも分かった。

 新装置は絵画や土器などにも使うことができ、他機関との共同研究が進むことが期待される。同大は産業界との連携も視野に入れており、中山ダイスケ学長は「県内のさまざまな人や機関に利用してほしい」と呼びかけた。

エックス線CT撮影装置の台座に載る善宝寺の五百羅漢像=山形市・東北芸術工科大

© 株式会社山形新聞社