指定管理鳥獣にクマ追加、被害対策強化期待 県「国の交付金支給早く」

クマによって食い荒らされたとみられるカボチャ畑。指定管理鳥獣への追加で都道府県による捕獲や生息調査が国の交付金の対象となる=2023年8月2日、尾花沢市中島

 伊藤信太郎環境相は16日、クマを「指定管理鳥獣」へ追加したと発表した。クマによる人的、農作物被害は県内でも増加している。県は新年度、人里への誘因となる不要果樹伐採に取り組む市町村を支援するなど新たな対策を講じる一方、国からの交付金で生息状況把握、捕獲の担い手確保などの強化を見込む。クマ対策は待ったなしの状況だ。担当者は「交付金の支給時期や補助率、具体的な対策指針を早期に示してほしい」と訴えている。

 クマが人里に現れる原因の一つとして、人家敷地内などにある放置された柿や栗が「目当てになっている」と指摘されてきた。放置されている背景に収穫する人の担い手不足があることから県は24年度、樹木の伐採や専門家による助言・指導を行う市町村に対し、支援する経費として278万円を一般会計当初予算に盛り込んだ。こうした取り組みに加え、「指定管理鳥獣」に追加されたことで、より“腰を据えた”対策が可能となる。

 県みどり自然課の担当者は、交付金活用を念頭に「被害対策を効果的に講じるには生息分布や個体数、被害状況などの正確な把握が重要となる」と強調する。現在は猟友会員が個体数管理のため春季捕獲の際、目視で確認しているが、他県の事例を参考に、定点カメラを設置するなど、より精度が高く、効率的な調査手法の導入を視野に入れる。

 猟友会員の高齢化などに伴い、捕獲の担い手確保も解決が求められる課題の一つだ。西日本などではクマが市街地に出没した際、専門の捕獲事業者の手を借りる例もある。交付金を活用した専門人材の確保・育成支援の充実で、本県でもこうした事業者の増加が期待されるという。同課は国に対し、「被害が大きく広がってしまう前に、交付金支給に向けた速やかな手続きと、自治体との情報共有を期待したい」としている。

【メモ】  県内のクマ目撃件数 昨年は記録が残る2003年以降、最多だった20年に次いで多い765件で、山菜採りの最中に襲われるなどの人的被害は5件発生した。

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