白山市美川地域で藩政期から伝わる珍味「ふぐの子」を気軽に味わってもらおうと、地元の製造業者がサブレを考案し、20日から販売を始めた。ふぐの子は郷土料理の素材や土産物として親しまれてきたが、近年は女性や若い世代が口にする機会が減り、食文化の継承が課題となっていた。幅広い世代に親しまれる洋菓子でふるさとの伝統に関心を持ってもらい、魅力発信につなげる。
●発酵食品製造「あら与」開発
サブレは、美川北町で発酵食品の製造販売を手掛ける「あら与」が開発した。サブレの生地にふぐの子に加え、熟成、発酵の際に必要となる県内産の米ぬかと酒かすを用いることで2種類を用意した。味は米ぬかの方がチーズのような濃厚な味わいで、酒かすは甘みが強く、しっとりした食感が特徴となっている。
店によると、美川ではふぐの子を知らない若い世代が増えている。「ふぐの子は知っているが食べ方が分からない」との意見も届いており、食べやすい商品としてサブレを開発することにした。
約2年前から開発に取り掛かり、羽咋市出身のフードアーティスト諏訪綾子さんがレシピを監修した。パッケージのデザインは金沢美大卒のグラフィックデザイナー福岡南央子さんが手掛けた。能登フグと発酵に使う木のたるに掛ける縄をモチーフにしたデザインで、色鮮やかで若者の注目を引くように工夫した。
サブレは当面、同店と白山市の道の駅めぐみ白山で販売する。今後は県内だけでなく、東京のアンテナショップなどに販路を広げ、美川の発酵食を全国に発信する。荒木敏明社長は「酒にも合う風味に仕上がった。多くの人に美川伝統の味わいを楽しんでほしい」と話した。