模型獅子頭で井波発信 金型開発、色塗り体験 元漫画家・南砺の本多さん

ワークショップで来館者に模型の獅子頭を紹介する本多さん=南砺市の道の駅井波

  ●木彫刻文化に関心を

 元漫画家で南砺市の金型設計製作会社に勤務する本多健志さん(46)が、精巧な獅子頭模型を樹脂で制作できる金型を開発し、井波の木彫刻文化が生んだ獅子頭の魅力を伝えている。道の駅で模型の色塗り体験を開催するほか、五箇山の合掌造りや招き猫などと組み合わせたユニークな獅子頭模型をつくった。本多さんは「金型の技術を生かし、伝統文化振興に貢献したい」と意欲をみせている。

 本多さんは南砺市出身で、20代で漫画雑誌ヤングサンデーにギャグ漫画「Stop! ナデシコさん」を連載。その後、南砺市のアニメ制作会社ピーエーワークスでアニメーターとして活動後、三恵金型工業に入社し、金型の設計デザインを担う。

 コロナ禍で受注が減っていた時期に、会社が技術力を紹介するアイデアを募集。本多さんは富山県内は獅子舞が盛んで、地元の井波彫刻の獅子頭も有名であることから金型の開発を提案。昨年2月に完成した。

 金型からつくった樹脂製の獅子頭は幅6センチ、高さ5センチ、奥行き3センチと小さいが、木彫りのものと同様にあごを動かせる。わずか5ミリの歯や力強い眉毛など細部を表現した。

  ●粘土で装飾

 本多さんは毎月第3日曜に道の駅井波で、獅子頭に色を塗るワークショップを開いて人気を集めている。元漫画家の創造力で、模型に粘土で装飾を加え、招き猫のような獅子頭やだるま獅子、シュークリーム型の獅子頭などを制作し、70種類を写真で紹介する図録も作成した。

 道の駅井波では、本多さんが彩色して他の社員が座布団を縫った獅子頭セットも土産品として取り扱っている。本多さんは「気軽に手に取れる模型をきっかけにして、獅子頭に関心を持ってほしい」と話した。

 ★井波彫刻の獅子頭 欄間、天神様に並ぶ伝統的工芸品の一つ。獅子舞の保存団体から修理の依頼も多く寄せられる。井波彫刻総合会館内には獅子頭をデザインしたゲートが設置され、井波彫刻協同組合は獅子頭をモチーフにした「獅子ギター」を開発し、注文につなげている。

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