「横浜愛」貫いた筒香嘉智 巨人決定的報道後に「ベイスターズに戻ることに決めました」と報告された(小倉清一郎)

筒香嘉智(C)日刊ゲンダイ

【松坂、筒香を育てた小倉清一郎 鬼の秘伝書】

「小倉さん、お久しぶりです。ベイスターズに戻ることに決めました」

筒香嘉智(32=ジャイアンツFA)の5年ぶり古巣DeNAへの復帰が発表される前、本人から電話で報告があった。

1週間ほど前に「巨人入り決定的」というスポーツ紙の報道を見た。巨人の方が金銭面などが良かった可能性はあるが、私はないと思っていた。

2006年10月の出会いを思い出した。

「ぜひ見て欲しい選手がいるんです」

中学の硬式クラブチーム・堺ビッグボーイズの関係者から連絡を受け、横浜高の部長だった私は、大阪へ飛んだ。

身長は180センチ超、体重は90キロ。本当に中学生? という体格だった。左打席のフリー打撃では、両翼100メートル近くはあるグラウンドでサク越えを連発。「ボク、右の方も自信があるんですよ」と右打ちでもサク越えを披露した。スイッチヒッターだった筒香との出会いである。

これだけの逸材だから、地元の強豪・PL学園から熱心に勧誘されていた。他の関西の強豪校からも声が掛かっていたというが、彼は私にこう言った。

「松坂大輔さんたちの活躍(1998年の甲子園春夏連覇)を見て憧れていた横浜高校に入りたいんです」

自宅のある和歌山から自分の意思で横浜にやってきた。ドラフト前も「横浜ベイスターズに行きたい」と希望球団を明かしていた。そんな「横浜愛」が強い男だけに、巨人には入らないと思っていた。

米国で苦しんだ理由は「タイミング」だ。本人にも伝えているが、米国時代はグリップをホームベースの上に構え、そこから引くために差し込まれていた。「始動が遅いから、グリップを頭の後ろに置いて構えたらどうか」と助言したこともある。近年、悩まされていた腰痛も「もう完治しています」とキッパリ言っていた。

横浜スタジアムは両翼94メートルと狭く、開幕から秋口まで、シーズン中のほとんどの期間、左打者には「ホームラン風」が吹いている。途中加入でも「30本塁打」はノルマだ。NPB通算205本塁打の筒香が加入すれば、本塁打の少ない打線の厚みも増すだろう。

高校3年時、1年生だった近藤健介(現ソフトバンク)をかわいがっていた。その近藤は今や球界を代表する打者に成長した。横浜高の後輩でドラフト1位ルーキーの度会隆輝への相乗効果も期待したい。

(小倉清一郎/元横浜高校野球部部長)

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日刊ゲンダイでは元横浜高校野球部部長の小倉清一郎氏と専大松戸の持丸修一監督のコラムを毎週交互に連載している。

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