本領発揮が待たれるファンタジスタ荒木遼太郎。カタール戦に意気揚々「緊張感のある試合は好きなので楽しみ」【U-23アジア杯】

狭いエリアで時間を作るキープ力、決定機につながる鮮やかなスルーパス、相手の虚を突いたミドルシュート。どれを取っても一級品で、J1の舞台で6戦5発の活躍を見せている理由は一目瞭然だ。

FC東京で輝きを放つ荒木遼太郎は、パリ五輪を目ざすU-23日本代表でもコンディションを維持しており、状態はすこぶる良い。グループステージを終えて無得点だが、ゴールの匂いは感じさせている。

パリ五輪のアジア最終予選を兼ねるU-23アジアカップのグループステージ初戦・中国戦(1-0)こそ出番はなかったが、続くUAE戦(2-0)で今大会初出場。先発で起用されると、持ち前の想像性豊かなプレーで攻撃陣を牽引する。

前半の中盤にはゴールライン側でうまく相手と入れ替わり、右足で惜しいシュートを見舞った。74分に交代したが、存在感は抜群で、攻撃のキーマンとして活躍を予感させるパフォーマンスだった。

2連勝でグループステージ突破が確定し、1位通過を懸けて迎えた韓国との第3戦目。再びスタートから起用されたが、この日は相手の堅守に苦戦して“らしさ”を示せなかった。特に前半はインサイドハーフの位置までボールが入らず、ひとつ下がってボールを捌くシーンが頻発。ゴールに近い場所でなかなか仕事ができず、相手に怖さを与えられなかった。

後半は持ち直し、高い位置でチャンスを創出。65分にはペナルティエリア手前からタイミングをずらしてミドルシュートを放つなど、本来の姿を垣間見せた。しかし、結果は残せずに77分に交代。もどかしさと歯痒さが残るゲームになったのは間違いない。試合は0-1で敗れた。

本人も韓国戦の出来に納得しておらず、反省の弁を述べた。「ボールに触れていなかったので、自分のリズムを作りたかった。そういう意味でも、チーム的にもテンポ良く回せていなかったので捌きに行った」と前半を振り返る。後半に関しては「(藤田譲瑠チマらの投入で)少しボールが回るようになったんですけど、その後すぐに交代してしまった。自分としての手応えはあまりない」と唇を噛んだ。

グループステージのパフォーマンスは決して悪くなかったが、肝心の結果が残せていない。だが、本人は焦っておらず、ノックアウトステージに向けて気持ちを新たにしている。

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ここからは負けたら終わりの一発勝負。25日の準々決勝で対戦するカタールは開催国で、完全アウェーの雰囲気が見込まれる。難しいシチュエーションとなるが、荒木は「緊張感のある試合は好きなので楽しみ」と意に介していない。

現時点でスタートから起用されるか、途中からピッチに立つかは不透明だが、どんな起用法であっても準備はできている。

「(先発なら)チームが勝つために守備もするし、点も決めるし、チャンスがあれば足を振ってゴールを決めたい」

「(途中出場なら)ゲーム状況を見ながら流れを変えたり、場合によっては守備に徹する必要もある。うまくゲームに入るために試合を見ながらやりたい」

いずれのパターンも想定済み。特に準々決勝からは引き分けが存在しない。90分で決着がつかなければ、15分ハーフの延長戦があり、その後にはPK戦も控えている。ベンチスタートとなれば、ゴールを奪いにいくための起用が濃厚だ。ゲームチェンジャーとして計算が立つだけに、大岩剛監督からの期待も大きい。

劣勢に陥った時に荒木の力は間違いなく必要になる。怪我などでもがき苦しんだ2年を経て、ようやく表舞台に帰ってきた背番号13は、日本のために全力を尽くす。自身がまだ味わっていない世界大会の舞台に立つべく、覚悟を持ってカタール戦に臨む。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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